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お子さんのむし歯予防④【6歳臼歯が生える時期】

今回は、6歳臼歯が生える時期のむし歯予防のポイントを解説します。

 

【歯の生え変わりについて】

≪6歳臼歯が生える時期と生え方≫

歯の生える時期にはかなり個人差がありますが、6歳臼歯は早い子だと5歳代から生え始めます。

この歯は、すべての歯の中で一番大きい歯です。

そのため出てくるスピードが遅く、しっかり生えきるまでおおよそ1年半ほどかかります。

 

どのように生えてくるかですが、

まずは歯茎の一部をやぶって、歯の一部分が姿を現します。

その後、徐々に歯を覆っている歯茎が少なくなり、咬み合わせの部分が全て見えるようになります。

そして、その後ゆっくりと上昇して、他の歯と同じ高さに揃います。

歯茎をやぶるのに半年、のぼってくるのに1年、といったところでしょうか(歯が生えるペースも、かなり個人差があります)。

 

 

 

ちなみに、同時期に前歯の生え変わりも起こります。

 

≪永久歯の生え方について≫

ここで一度、永久歯の生え方について整理しておきます。

永久歯が生えてくるときには、

乳歯が取れて、その下から生えてくるパターン(「生え変わり」パターン)

と、

一番後ろの歯のさらに後ろに、新たに追加で生えてくるパターン(「追加」パターン)

の2種類があります。

 

この時期の場合、

6歳臼歯は「追加」パターン

前歯は「生え変わり」パターン

になります。

 

 

 

【6歳臼歯をむし歯にしないための特別な配慮(仕上げ磨き)】

≪6歳臼歯は、とっても大事!≫

さて、この時期のむし歯予防の最大の課題は、

「6歳臼歯を死守する!」

ということです。

他の永久歯ももちろん大切なのですが、数ある永久歯の中でも6歳臼歯は最重要な歯です。

 

この歯は咀嚼の中心であり、噛みしめ時にもしっかりアゴを支えるなど、歯の機能の根幹を担う歯です(そのために一番の大きさがあります)。

 

歯というのは、食事はもちろんのこと、スポーツをするときにも重要な器官です。

人間、大きな力を発揮したり、何かに集中したりするときには噛みしめるためです。

この噛みしめがうまくできないと、スポーツのパフォーマンスも落ちてしまいます。

 

この大切な6歳臼歯を守り切れるか否かで、その子の人生が変わるぐらい、とても重要な歯なのです。

 

しかしながら、こんなに大切な歯なのに、生えている途中はとてもむし歯になりやすい状況にさらされる歯でもあります。

 

≪6歳臼歯がむし歯になりやすい理由≫

なぜそのような状況になってしまうのか?

その理由には、次のようなことがあげられます。

 

・乳歯のご説明の時にもお話しましたが、歯は生えたての時はまだ未完成で、出てきた後でフッ素やカルシウムを取り込んで完成します。これは6歳臼歯も同じで、生えている途中の歯は、元々むし歯になりやすいリスクを負っています

・生えている途中段階では、歯茎が中途半端に歯をおおっている状態になります。6歳臼歯は、一番奥の乳歯の、さらに奥に生えてきますので、生えている範囲が狭いうちは親御さんによる目視が難しいため見逃しやすく、対策が遅れてしまう可能性があります。

・同じく、中途半端に覆っている状態だと、汚れがたまりやすく、かつ磨くことも難しい状況になります。(磨こうと思ったら、歯ブラシの毛先を水平にして歯と歯茎のすきまに入れ込んで、歯茎をめくるようにしないといけません。これにはかなりテクニックが要ります)そのため、歯茎の下の部分が不潔になりやすく、むし歯のリスクが上がってしまいます。

・その後、おおっていた歯茎がなくなったとしても、生えている途中の歯は背が低いため、意識して磨かないと歯ブラシの毛先が届きにくい状態になります。

・そして6歳臼歯はしっかり生えきるまで時間がかかるので、そのように磨きが甘くなりやすい時期が長くなります

・6歳臼歯は「奥歯」なので、元々の構造として歯の表面に溝がたくさんあります。溝の部分はくぼんでいるため、歯そのものの構造として、汚れがたまりやすい形になっています。

 

以上のような条件から、生えている途中の6歳臼歯はむし歯のリスクにさらされる危険性がかなり高いです。

 

そのため、6歳臼歯がしっかりはえきるまで、特別な配慮が必要になります。

 

≪6歳臼歯を死守する方法≫

とはいっても、やることは実に単純で、要は「6歳臼歯の部分を念入りに磨く」ということです。

ちなみにこの時期は、年齢的にまだお子さん一人で「きちんと磨く」ということは難しいため、親御さんによる仕上げ磨きを必ずしてあげましょう。

 

それでは、具体的になにをすべきかをご説明します。

 

まずは、日々の仕上げ磨きの時に、乳歯の奥歯の、「さらに奥」をよく見て、生えてきているかどうかをしっかり確認してください。(生えてきていることを見逃さない!)

自信がない場合は、歯医者さんで診てもらってもいいと思います。

歯医者さんで定期的にフッ素塗りに通っている方は、この時期だけ期間をせばめてフッ素を塗ってもらうことも有効です。

(当院では、実際にこの時期のお子さんには健診間隔をせばめることをお勧めしています)

 

生えているのが確認できた場合は、仕上げ磨きの時に少し工夫をします。

まずは、歯磨き粉を、一番最初に6歳臼歯の表面に塗ります(上下左右4本とも生えてきている場合は、4本とも全てに塗る)。

歯磨き粉の中にはフッ素が含まれています。

ハミガキをしていると、刺激により唾液がたくさん出てきます。

そうなると、歯磨き粉と唾液が混じってフッ素の濃度がどんどん薄まります。

つまり、歯磨き粉のフッ素濃度は、出したての時が一番高いということになります。

 

しっかりフッ素を効かせたいので、薄まる前にまず表面に塗っちゃおう!

 

という作戦です。

そして、そのまままずは6歳臼歯を念入りに磨いてください。

まだ生えている途中で高さがない場合は、しっかり毛先を届かせるよう意識をしないと「空振り」になりますので、注意して磨いてください。

その後で、他の歯を磨きます。

これを毎日、寝る前にして、6歳臼歯を死守しましょう!

 

≪「仕上げ磨き」について≫

ちなみに、親御さんによる仕上げ磨きですが、当院ではその終了時期(つまりお子さん一人だけで磨き始める時期)を、おおむね9歳が過ぎた頃としています。

9歳ぐらいになると、お子さん自身の成長により、自分でハミガキができる「器用さ」が充分になるからです。

その器用さにも個人差があるとは思いますが、その目安として、自分で爪切りができるぐらいの器用さが備われば、ある程度細かいハミガキも可能と考えています。

ただ、器用さが備わっても、そもそも正しいやり方を知らなければ、できません。

なので、不安な場合は歯医者さんに行って、歯科衛生士さんに教えてもらいましょう。

ある程度の練習も必要なってくると思います。

 

 

【おやつコントロールについて】

≪おやつはルールを守って与える≫

おやつコントロールについては、前回の内容とほぼ同じです。

未読の方は、こちらを参考にして下さい。

お子さんのむし歯予防②【乳歯の前歯のみ生えている時期】(6か月~1歳3カ月ぐらい)

ルールを守って、正しくおやつを食べるようにしましょう。

 

≪おやつコントロールにおいても、6歳臼歯への配慮が必要≫

ただし、ここでも6歳臼歯に注意する必要があります。

6歳臼歯が生えかけの時は、その歯が低い位置にいます。

そのため、特にハイリスクのお菓子(チョコ・キャラメル・ハイチュウ)はその低くなっているところに入り込み、残りやすくなります。

前述したように、低いがゆえに、ハミガキもしにくい場所です。

さらに、これらのお菓子はネッチョリしているので、取れにくい状態でもあります。

つまり、

入り込みやすく、

残りやすく、

取り除きにくい

状態です。

これがいかに危険な状態かおわかりいただけるでしょうか?

このことを考えると、少なくとも6歳臼歯がある程度しっかり生えてくるまで(高さが手前の歯の半分ぐらいになるまで)は、ハイリスクのお菓子は食べない方がいいと思います。

 

≪リスクに応じて、おやつの与え方を変える≫

ただ、この年齢になると、お子さん自身の経験値もかなり豊富になり、ハイリスクお菓子のおいしさをすでに知っているお子さんも多いと思います。

前回もご説明した通り、抑制しすぎによる「反動」の危険性も考えると、多少は与えざるを得ないかもしれません。

 

なので、折衝案として、

前回までご紹介したむし歯予防対策に取り組んでいて

かつ

今までむし歯が実際にできていない

お子さんの場合は、リスクは低く抑えられているので、ハイリスクお菓子を多少与えても、問題はないと思います。

ただし、ルールはしっかり守ってください。

 

今まで一度でもむし歯の経験があるお子さんは、残念ながらリスクは高いです。

ハイリスクお菓子を食べないに越したことはありませんが、万が一食べる場合は、食後に必ず親御さんによる仕上げ磨きをしてあげてください。

もちろん歯磨き粉を使って。

それができないのであれば、やはり与えるべきではないです。

ルールを守って、ゼロミドルリスクのお菓子を食べることで我慢しましょう。

また、むし歯経験があるお子さんは、その「潜在的なリスク」として、棲みついているむし歯菌が強くなってしまっている可能性があります。

むし歯菌を弱らせるための対策にも取り組んでみましょう。

詳細はこちらをご覧ください【むし歯菌を弱らせる対策】

 

 

以上が、6歳臼歯が生える時期のむし歯対策です。

同時期に前歯の生え変わりもありますが、前歯は6歳臼歯ほどむし歯のリスクが高まる要因が多くはないですし、磨きやすい位置にもありますので、特別な配慮はいらないと思います。

 

【この時期を過ぎてしばらくは、むし歯リスクは小康状態になる】

この時期を過ぎて、3年生~5,6年生までのあいだで、前歯と6歳臼歯の間にある歯(犬歯・小臼歯)が生え変わっていきます。(全て「生え変わり」パターンです)

これらの歯も、6歳臼歯ほどはリスクは高くないので、むし歯リスクとしてはしばらく小康状態となります。

もちろん油断は禁物ですが、この時期は6歳臼歯ほどの特別な配慮までは必要ないと思います。

 

 

今回は以上です。

次回は、【12歳臼歯が生える時期】(小学5年~中学3年)について解説していきます。

 

その他のリンク

お子さんのむし歯予防①【はじめに】(知っておいてほしい基礎知識)

お子さんのむし歯予防②【乳歯の前歯のみ生えている時期】(6か月~1歳3カ月ぐらい)

お子さんのむし歯予防③【乳歯の奥歯の生え始め~永久歯が生え始める前】(1歳4か月~6歳)