今回は、12歳臼歯が生える時期のむし歯予防対策について解説します。
【12歳臼歯とは】
12歳臼歯は、その名の通り、12歳前後の時期に生えてくる永久歯で、前から数えて7番目の歯になります。
12歳臼歯は、6歳臼歯のさらに奥に、「追加」で生えてきます。
(たまに「親知らず」と勘違いされる親御さんがいらっしゃいますが、親知らずはこの12歳臼歯のさらに奥、8番目の歯で、生える時期は高校生以降になります)
ですので、ざっくり小学5年生~中学3年生ぐらいまででの注意点となります。
【似ているようで似ていない12歳臼歯と6歳臼歯】
歯の構造や生え方などの条件として、6歳臼歯と同じぐらい高いむし歯リスクがあります。
しかし6歳臼歯の時と違うのは、お子さん自身が成長し、お兄さん・お姉さんになっている、ということです。
つまり、親御さんの仕上げ磨きはもう完全にしない時期ですし、お子さんによっては思春期に入っている方もいるかもしれません。
また、中学校への進学の時期、あるいはそれに向けての受験の時期でもあります。夜に塾に行く子も多いと思います。
部活動もはじまります。
このように、6歳の頃とちがうのは、
・お子様ご自身で歯を守る努力をしなければならない
・受験や進学、部活により生活環境・生活リズムが変わりやすい、あるいは不規則になりやすい
という点です。
予防の主体がお子さんであり、さらに思春期となると親御さんが介入することも難しいので、今回は「親御さんができるサポート」という観点から、予防のヒントをお伝えしていきます。
【考え方は今までと同じ】
むし歯リスクの考え方自体は、これまでと変わりません。
「砂糖がお口の中に存在している時間(特に夜寝ている時)を短くする」
「フッ素入り歯磨き粉を使ったハミガキを毎日寝る前にする」
この2点が重要です。
このうち、ハミガキは、もはや親御さんがどうこうすることではないので、不安であれば歯科医院でハミガキ方法を教えてもらい、定期的にクリーニングもしてもらいましょう。(親御さんには反抗的でも、他人である歯科医院のスタッフの言うことは聞く・・・かもしれません)
ただ、夜、寝る前のハミガキは、何はなくともぜひともやってほしいところです。
夜寝ている間は、むし歯リスクが高まるので、その時間帯にお口の中の砂糖分をなくしておきたいからです。
まあ、勉強終わりの時間だと、ひょっとしたら親御さんの方が先に寝ている可能性もあるので、これも結局は本人に委ねるしかないのかもしれませんが・・・
【食事のコントロールについて】
砂糖のこと、つまり「食生活」については、「買い食い」を除いて親御さんがまだコントロールできる余地があるので(食事は親御さんが用意すると思います)、この時期にできることをご説明します。
≪夜の勉強の時に与えるもの(お夜食)≫
夜遅くまで塾に通っている、あるいは遅くまで自分の部屋で勉強する、というお子さんが多いと思います。
勉強する時には脳のエネルギーとして「糖分(ブドウ糖)」が必要になります。
なので効率的な勉強のためには、糖分摂取が必要になります。
糖分摂取として手っ取り早いのは「お菓子」ですが、それをダラダラ食べながら勉強をしていると、あっという間にむし歯になってしまいます。
いわゆるお夜食として提供するとしたら、おにぎりやうどんなど、「お菓子」ではなく、エネルギーになる「炭水化物」を含んだ「食事」系のものにしましょう。
そして、勉強しながら食べるのではなく、一旦鉛筆を置いて、休憩も兼ねてササっと食べちゃいましょう。
むし歯リスクの観点から食事時間は短い方がいいのですが、勉強しながらだとダラダラ食いになる可能性があるためです。
どうしても甘いものがいい!というお子さんにお勧めなのが、キシリトールガムです。
キシリトールというのは、むし歯の原因にならない甘味料です。
そのため、キシリトールガムは、どんなにたくさん食べてもそれだけだと絶対にむし歯になりません。
また、ガムを咬む「咀嚼」という運動は、勉強への集中力を高めてくれるとも言われています。
そして、飲み物はジュースではなく、お茶にしましょう。
≪運動時のエネルギー・水分補給≫
スポ少や部活など、スポーツをしているお子さんも少なくないと思います。
スポーツをする上で大切なのが、エネルギーと水分です。
スポーツでは、勉強と違って、急激にエネルギーと水分が消耗していきます。
また、下手に満腹になってしまうと、うまいこと体を動かすことができなくなってしまいます。
なので、競技途中でのエネルギーと水分補給に最も適しているのはスポーツドリンクだと思います。
しかしスポーツドリンクそのものは、糖分を大量に含むのでむし歯のリスクを上げてしまいます。
また、競技中であればチビチビ飲む、という飲み方にもなり、よけいにリスクが上がってしまいます。
ここでできる工夫としては、
スポーツドリンクのあとは、毎回麦茶か緑茶を飲む
ということです。
最後にお茶を飲めば、お口の中の糖分が胃に洗い流されていきます。
(少し不作法かもしれませんが、お茶を飲みこむ前に「ブクブクうがい」をすると、よりしっかりと砂糖分を排除できます)
あるいは、水道水でうがいをする、というのも有効です。
要はお口のなかから糖分を追い出せればそれでいいわけです。
麦茶は、体をクールダウンさせてくれる作用があります。
緑茶は、カテキンやフッ素が含まれているので、むし歯予防に有効です。
また、許される競技であれば、競技中にキシリトールガムを咬むのもいいと思います。
以上が、12歳臼歯が生える時期のむし歯予防のポイントです。
【今までにむし歯ができたことがある場合】
今までにむし歯ができたことがあるお子さんは、むし歯のリスクが高い可能性があります。
「食生活」や「ハミガキ習慣」が原因の可能性がありますので、今回ご紹介した内容に加え、これまでの年齢別にご紹介してきた内容にもヒントは盛りだくさんなので、そちらをご覧になってください。
また、むし歯の「潜在的なリスク」として、棲みついているむし歯菌が強くなってしまっている可能性があります。
むし歯菌を弱らせるための対策は、こちらをご覧ください【むし歯菌を弱らせる対策】
その他のリンク
お子さんのむし歯予防①【はじめに】(知っておいてほしい基礎知識)
お子さんのむし歯予防②【乳歯の前歯のみ生えている時期】(6か月~1歳3カ月ぐらい)
お子さんのむし歯予防③【乳歯の奥歯の生え始め~永久歯が生え始める前】(1歳4か月~6歳)
お子さんのむし歯予防④【6歳臼歯が生える時期】(5歳~9歳)