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お子さんのむし歯予防②【乳歯の前歯のみ生えている時期】

今回は、乳歯の前歯のみ生えている時期のむし歯予防のポイントについて解説していきます。

歯の生え方にはかなり個人差があるのですが、今回の対策はおおむね6か月~1歳3カ月ぐらいになると思います。

 

【おやつコントロール】

 

≪この時期は「おやつなし」が基本≫

お口の中には、さまざまな細菌が生息しています。

その中には、むし歯菌のような「悪玉菌」もいれば、特に体に害を及ぼさない「無害な菌」もいます。

それらの菌のバランスは人によってさまざまで、その違いによってむし歯のなりやすさが変わってきます。

 

生まれてから3歳ぐらいまではこの細菌バランスはとても変動しやすいと言われています。

 

そのため、この時期に砂糖の摂取量が多いと、それをエサにしているむし歯菌ばかりが元気になり、他の無害な菌を駆逐してしまいます。

この状態で3歳を迎えると、むし歯菌が優勢となり、むし歯になりやすい口腔内環境ができあがってしまいます。

 

逆に、3歳までに砂糖の摂取量を控えていると、むし歯菌が無害な菌に駆逐されてしまい、むし歯になりにくい口腔内環境ができあがります。

(3歳を過ぎても、あまりにも砂糖の摂取が多かったりすると、細菌バランスが崩れる可能性はありますが、細菌バランスの変動のしやすさの観点では、3歳までが特に要注意です)

 

 

 

お口の中の細菌への砂糖の供給源は、その子が食べたものです。

当然のことですが、低年齢のお子さんは、親御さんが用意した食事を食べます。

なので、むし歯になりやすいか・なりにくいか、どちらの口腔内環境になるかは、親御さんが与えた食べ物・飲み物に100%影響されることになります。

 

そして、お菓子は、買わないと手に入りません。(もらうものもあるとは思いますが、日常的に買うお菓子と比べると、その量はたかが知れていると思います)

 

つまり、この年齢のお子さんにお菓子を買い与えるということは、

「わざわざお金をかけて」

将来お子さんを苦しめることになるであろう敵を、ご丁寧に

「育成している」

ということになります。

「敵に塩を送る」といったところでしょうか(送っているのは砂糖ですが)

こんなバカげたことはないと思います。

 

以上のことを考えると、口腔内環境に大きな影響を及ぼすとても大切なこの時期に、わざわざお菓子を買い与えることの愚かしさに気が付かれると思います。

 

なので、この時期には基本的には、「おやつなし」がいいと思います。

 

 

≪栄養補助は、「食事」回数を増やすことで解決する≫

「おやつ」には栄養補助的な側面もありますが、そもそもこの時期は栄養的にみて補助的に「砂糖」が必要な状況はほぼありえないと思います。

 

この時期のお食事は、母乳・ミルク・離乳食がメインになります。

低年齢だと胃が小さいため、朝昼晩の3食に加えて合間で栄養補給する必要はあります。

しかしその場合でも、安易にお菓子で済ますのではなく、離乳食やおにぎりなど、お菓子以外のものを与えて栄養補助としましょう。

(「おやつ」ではなく「食事」の回数をもう1、2回増やすイメージです)

 

≪それでも、どうしてもおやつを与えたい方へ≫

おやつを与えるなら、フルーツにしましょう。

初回でご紹介したミドルリスクハイリスクのお菓子は、この時期には与えないようにしましょう。

水分補給はジュースではなく、お茶(ベビー麦茶)やお水、ミルクにしましょう。

また、水分補給といえば清涼飲料水が思い浮かぶ方もいるかもしれませんが、清涼飲料水にも、結構な量の砂糖が入っています。

熱中症になってしまって緊急性がある場合は別ですが、普段から飲ませることはやめましょう。

 

飲み物に関しては、ジュースなどの甘いものしか飲ませていなかった場合、「甘い味」に慣れてしまい、いざお茶を飲ませようとしたときに、ジュースに比べると「苦い」のでお子さんが拒否してしまう、という話をたまに聞きます。

味に慣れさせるという意味でも、お普段飲む物は、お茶(ノンカフェインのもの)にしておいた方がいいと思います。

 

また、寝かしつけのため?ミルクやジュース入りの哺乳瓶を寝る時にくわえさせる親御さんがいると聞いたことがあります。

寝ている時はむし歯リスクが上がりますので、これもやめておきましょう。

 

≪おやつコントロールのポイントまとめ≫

・基本的には、おやつなし

・栄養補助には、お菓子以外のもの(離乳食、おにぎりなど)を与えましょう

・おやつを与えるなら、フルーツを。普通のお菓子はNG

・水分補給はお茶・お水・ミルクにして、ジュースは与えない

 

 

【ハミガキについて】

≪この時期の目的は「ハミガキ習慣の習慣付け」≫

この時期はもちろん自分ではみがけませんので、親御さんによるハミガキが必須になります。

一日一回、寝る前に、親御さんがお子さんのハミガキをしてあげましょう。

 

この時期のハミガキの目的は、「汚れを落とすこと」より、「ハミガキの習慣付け」の意味合いの方が大きいです。

まだ物心がついていない時期から、一日一回ハミガキを必ずしていると、その子の中で「毎日のルーティンワーク」としてハミガキが確立され、ハミガキをすることが「当たり前」になります。

 

この「当たり前」が、非常~に重要なんです。

 

というのは、物心がついたあとで、新たな生活習慣を身に着けさせるのは、かなり大変だからです。

 

これをご覧になっている方も、自分が子供の頃を思い出してみてください。

例えば、親御さんから、「外から帰ってきたらすぐに手洗いうがいをしなさい」と言われた場合、素直に実行できていたでしょうか?

めんどくさがってしなかった経験はないですか?

 

そして、物事がよく理解できるはずの大人ですら、生活習慣を改めることはかなり難しいです。

例えば、今から「寝る前に毎日腹筋運動を10回やってください」と言われて、今後の人生において絶対に毎日続けられる自信がありますか?

 

このように、はみがきの習慣付けを「あとまわし」にしてしまったら、後から身に着けることにはかなりの困難が待ち受けています。

まだ物心がついていない「今」がチャンスですし、簡単に習慣づけできるのは「今」しかありません。

 

≪ハミガキのやり方≫

使う道具は、子供用の歯ブラシもしくはハミガキシートです。

が、後述しますが歯磨き粉もできれば使った方がいいので、そのことを考えると、ハミガキシートよりは歯ブラシの方が扱いやすいと思います。

 

磨く対象の歯は少ないので、時間はかけなくていいです。

上下合わせても10秒ぐらいでしょうか。

 

≪「楽しそうに」する≫

そして、最も重要なポイントは、

「楽しそうに」やることです。

 

基本的に動物にとって「口」というのは、生き延びるために最も重要な栄養摂取の入り口であり、さらに肉食動物にとってはその栄養源となる獲物を捕らえる「武器」でもあるため、とても大切な器官です。

そのため、人間を含めた動物は本能的にお口周りを他人に触られるのを嫌がります。

これは低年齢児も同じです。

この、「本能的に嫌なこと」をいかにうまく受け入れさせるか?が課題になります。

 

そのための対策が、楽しそうにやることです。

お子さんは親御さんの「楽しそうな姿」「笑っている姿」に安心感を覚えます。

なので、本能的にはしてほしくないこと(口を触られること)を、親御さんが楽しそうに、お遊戯のひとつであるかのようにすることで、『ハミガキは楽しいことなんだよ~』と、いい意味で「騙して」あげましょう。

いきなりお口の中に歯ブラシを入れるのではなく、『これからハミガキするよ~』と笑顔でいいながら、まずは楽しそうにお口まわり(ほっぺやくちびる)をプニプニしてあげるのもいいかもしれません。

 

逆に、子供は親御さんの怖い顔はキライです。(私も、家内の怖い顔はキライです)

真面目な親御さんほど、「ハミガキしなきゃ!」と思って真剣な顔つきになりがちです。

「真剣な顔」=「怖い顔」です。

おやつコントロールができていれば、少々みがけていなくても大してリスクは上がりませんので、完璧に汚れを取る必要はありません。

気を楽にして、お子さんとのスキンシップの一環として、ハミガキを楽しそうにしてあげてください。

そしてハミガキを楽しそうにするためにも、「おやつコントロール」の方は、完璧にしておきましょう。

 

≪歯みがき粉について≫

歯みがき粉は、使った方がベターです。

この時期は、前歯が生えはじめてからあまり時間が経っていません。

 

歯は、実は生えてからしばらくはまだ未完成で、生えてきたあとでフッ素カルシウムを取り込むことでより強靭になり、完成していきます。

「たけのこ」(生えたて)と「竹」(完成)のイメージでしょうか。

なので、生えたての歯というのはその歯にとっては一番むし歯になりやすい時期なのです。

 

リスクを減らすには、なるべく早く「たけのこ」から「竹」に成長させてあげることが必要です。

そのための手段として、歯磨き粉を使いましょう。

現在市販されているハミガキ粉のほとんどに、薬用成分(歯を強くする成分)としてフッ素が配合されています。

毎日のハミガキの時に歯磨き粉を使うことで、フッ素を浸透させ、歯の完成を早めることができます。

 

この時期の歯みがき粉の量は、米粒ひとつぶぐらいで大丈夫です。

これを歯ブラシの毛先に出して、ハミガキをしましょう。

 

うがいはできなくて大丈夫です。

というより、うがいをしない方が、フッ素成分が残ってむし歯予防には有利です。

しかし、私の息子も、その狙いがあってうがいをしないようにしていたのですが、朝起きた時の「口臭」が強めに出てくるようになった、という経験があります。

起床後に一回でも飲食すればその臭いは消えるのですが、これが気になる方は、ハミガキのあとにお茶かお水を飲ませてあげると、残った歯磨き粉が胃の方に洗い流されていきます。

 

≪ハミガキを嫌がるお子さんへの対策≫

よく親御さんから相談を受けることに、

「すごく嫌がってハミガキをさせてくれない」

ということがあります。

その対策として、前述した「楽しそうにやる」ということも一つの手です。

他の対策として、

NHKの「おかあさんといっしょ」の番組内にある「はみがきじょうずかな」を親子で見たり、

ハミガキを楽しそうにしている絵本を読んであげたりする、

といった対策もあります。

 

そして、前に比べてちょっとでも出来るようになったことがあったら、嬉しそうにして、子供をほめることです。

『わあすごい!昨日は上の歯しかハミガキできなかったけど、今日は下の歯もできたよ!ありがとう!』とオーバーめにほめて、頭をなでてあげてください。

心の中では、『今日も泣くばっかりしてイライラするわ~』と思っていることと思います。

お気持ち、分かります。

でも、それでも、子供の前ではそれを隠して、がんばって演技してみてください!

信じられないかもしれませんが、

子供の行動変容を起こす一番の近道は、「できないことを叱る」のではなく、「出来たことをほめる」こと

です。

(これは息子がお世話になった幼児教育の先生方から、実際に教わったテクニックです)

 

また、実際どれだけ嫌がっても、絶対に1日1回はハミガキしましょう。

押さえつけてでも、しましょう。

ハミガキはあくまでお子さんのためにやっていることで、いじわるでやっていることではありません。

むしろ親の愛情があるからこそ、やることです。

成長して理屈が理解できるようになってくれば、ハミガキの必要性・親の気持ちも分かるようになってきます。

それまでの辛抱です。

ここで妥協しては、ハミガキの習慣付けの目標が達成できなくなり、結局将来苦しむことになります。

 

≪ハミガキのポイントまとめ≫

「習慣付け」が第一目標

「楽しそうに」磨いてあげる!

・米粒ひとつぶ程度の歯みがき粉を、必ず使う

・嫌がっても絶対にハミガキは、する

・ハミガキが終わったら、しっかりほめる

 

今回は以上です。

次回は、【乳歯の奥歯の生え始め~永久歯が生え始める前】(1歳4か月~6歳ぐらいまで)
について解説していきます。

 

その他のリンク

お子さんのむし歯予防①【はじめに】(知っておいてほしい基礎知識)

お子さんのむし歯予防④【6歳臼歯が生える時期】(5歳~9歳)

お子さんのむし歯予防⑤【12歳臼歯が生える時期】(小学5年~中学3年)