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むし歯菌を弱らせる方法

みなさんこんにちは。

今回は、お口の中に潜んでいるむし歯菌を弱らせる方法についてご紹介します。

 

 

潜在的なむし歯のリスクとして、棲みついているむし歯菌の「強さ」があります。

むし歯菌が強いと、ハミガキをより念入りにしていなければ、すぐに新しいむし歯ができてしまいます。

逆にむし歯菌が弱いと、少々ハミガキをサボったとしても、すぐにすぐむし歯になることはありません。

これまで一度でも、むし歯になった経験のある方は、このむし歯の「潜在リスク」が高い可能性があります。

この潜在リスクを下げることで、よりむし歯になりにくくすることができる可能性がありますので、是非取り組んでみてください。

 

 

さて、まず結論から申し上げますと、それは、

 

「毎日、キシリトール製品を食べる」

 

という方法です。

 

 

まずはキシリトールについて、ご説明します。

 

キシリトールとは、数ある「むし歯の原因にならない甘味料」のひとつです。

「甘味料」とは、人間がお口に含んだ時に「甘い」と感じる物質の総称です。

代表的なものは、「砂糖(ショ糖)」「果糖」「乳糖」「オリゴ糖」などの「糖類」ですが、糖類に分類されるもの以外にも、アミノ酸に分類される甘味料があったりします。

 

そして、糖類の中でもさらに「糖アルコール」と分類されるものは、糖類としては例外的にむし歯の原因にならない性質をもっています。

 

キシリトールは、その糖アルコールのひとつなので、むし歯の原因にならない甘味料というわけです。

 

 

そして、さらに驚くべきことに、キシリトールについては、むし歯の原因にならないのみならず、むし歯菌を弱らせる作用もある、という報告があります。

 

キシリトールについての多くの研究はスウェーデンで行われています(スウェーデンは、「むし歯予防先進国」です)。そしてここ日本でも、キシリトールの研究がなされています。

 

ここでは日本で行われた研究をご紹介します。

 

この研究では、研究に参加して頂いたのは妊婦さんです。

ある産婦人科に来られている妊婦さんたちに、研究についてご説明し、賛同を得られた方を対象に研究が行われました。

まずは、参加した妊婦さん全員の、研究開始前のむし歯菌(ミュータンス菌)の量を調べます。

そして妊婦さんを2つのグループに分け、

①片方はキシリトールが含まれたガムを、

②もう片方にはキシリトールを含まないダミーのガムを

毎日噛んでもらい、これを1年間継続してもらったそうです。

その後、1年経過時にもう一度むし歯菌の量を調べたところ、むし歯菌の量が減っていた、というものです。

さらに、その「むし歯菌の数が少ない状況」が、ガム摂取をやめた後の少なくとも1年間は継続した、という結果も出ています。

 

この研究の画期的なところは、「ミュータンス菌」を減らすことができた、という点にあります。

「むし歯菌」という言葉は、むし歯を引き起こす力を持った細菌の総称で、実はその中で色々な種類の細菌がいます。

「犬」の中に「ポメラニアン」や「柴犬」などの種類があるようなものです。

 

歯医者の世界で、むし歯菌として昔から識別されていたのは、「ミュータンス菌」と「乳酸桿菌」と呼ばれる細菌です。

このうち、乳酸桿菌については、例えばそれまでハミガキをおろそかにしていた人がしっかりハミガキができるようになるなど、いわゆる普通の「むし歯予防の努力」で、数が減ることが分かっていました。

しかし、ミュータンス菌については、どれだけハミガキを頑張っても、フッ素を使っても、はたまたどんな抗生剤やうがい薬、消毒薬を使っても、その数を減らすことは不可能でした。

一時的に減ったとしても、すぐに復活してきてしまう、とても厄介なむし歯菌でした。

 

このように歯医者の歴史上、とても厄介な「超!悪玉菌」であったミュータンス菌ですが、先ほどご紹介した研究のように、キシリトールを摂取することによって、その量を減らし、弱らせることができる可能性が出てきたわけです。

 

つまり、見方を変えると、キシリトールはむし歯菌を弱らせることのできる唯一の「薬」と捉えることもできます。

 

なので、これまでむし歯になった経験のある方は、少なくとも1年間、研究の方法に準じた形でキシリトールを摂取し、1年経過後も、ちょくちょくキシリトールを摂取することで、むし歯菌を弱らせて、さらにそれを維持し、将来的なむし歯を予防できる確率を上げることができる可能性があります。

 

 

では、具体的にどうすればいいかを、これからご説明します。

 

先ほどご紹介した日本の研究によると、実際に摂取した1日あたりのキシリトールの量は3.83gであったそうです。

また、その他のスウェーデン等のキシリトール研究者の意見では、1日の推奨摂取量は5~10gだそうです。

なので、1日最低4gを目標にして、キシリトール製品を毎日食べること。

これをまずは1年間継続しましょう。

 

世の中に広く市販されているキシリトール製品は2種類で、ガムかタブレットになります。

 

オススメはガムです。

ガムは味がなくなるまで咬み続ける必要があるため、長時間キシリトールを作用させることができます。

また、咀嚼の刺激により唾液がたくさん出るので、このこともむし歯予防の一助になります。

 

一番有名なのは、ロッテの「キシリトールガム」で、パッケージを見ると、一粒あたり2gのキシリトールが入っているようです。

なので、1日あたり2~3粒を目標に食べるようにしましょう。

 

先ほどの研究では、1日3.83gのキシリトールを、回数を分けて摂取してもらったとのことなので、1回で1日量全てを食べるのではなく、朝、昼、晩など、回数を分けて摂取するようにしてください。

ちなみに個人的な意見ですが、夜寝る直前がいいのではと思います。

通常の砂糖を含むお菓子は、夜寝る前は厳禁です。

というのも、寝ている時は会話などのお口の動きが少なくなり、唾液の分泌量も減るので、砂糖を洗い流す作用が減り、むし歯のリスクが上がってしまうからです。

ですがキシリトールについては、これをむしろ逆用しましょう。

つまり、キシリトールガムを食べた後にそのままハミガキやうがいをせずに寝ることで、わざとにお口の中にキシリトール成分を残すようにします。

そうすることで、より長時間キシリトールという「薬」を作用させることができると考えます。

(ただ、この場合は、起床直後の「口臭」が強めにでる可能性があります。この口臭は、うがいやハミガキをすればすぐになくなりますが、それが嫌な方は、キシリトールのあとにうがいかハミガキをして寝ましょう)

 

・小さいお子さんでガムがまだ噛めない場合

・今まで詰め物やかぶせの治療がたくさんしていて、ガムを咬むと取れそうな場合

・そもそもガムが嫌いな場合

は、ガムではなくタブレットを摂取しましょう。

 

タブレット商品は、味のラインナップがとても豊富で、チョコレート味なんかもあったりするので、ガムの味に飽きてしまった場合にも有効です。

キシリトールの含有量は、商品によってバラつきがあります。

パッケージのどこかに記載されているものがほとんどですので、ご自身で計算して、1日の合計が4g以上になるようにしてください。

 

タブレットは、ガムと違って、かみ砕いて飲み込んで、すぐに食べ終わることができますが、できればアメのように「溶けるまでなめる」食べ方をして、なるべく長時間お口の中にとどめるようにしましょう。

 

 

ちなみに・・・

このキシリトールの「ミュータンス菌を弱らせる作用」については、実は否定的な意見もあります。

科学の世界では、たったひとつの研究の結果が100%正しい、ということにはなりません。

同じような研究をして、成功した結果もあれば失敗した結果もあります。その積み重ねによって、調べられたことが事実かどうかが、判明していきます。

キシリトールのミュータンス菌抑制効果についても、菌が減った研究もあれば、変化がなかったとする研究もあります。

なので、現時点では、あくまで「可能性」に過ぎませんが、可能性があるのであれば、やらないよりはマシです。

そもそもキシリトールはむし歯の原因にならない、ということは確実な事実なわけですから、少なくとも「普通のお菓子(むし歯の原因になるお菓子)」からキシリトール製品に置き換えるだけでも、未然にむし歯を防ぐことには変わりはありませんので、いずれにしろキシリトールは、お勧めです。

少なくとも、「しっかりしたハミガキ方法を練習する」手間よりかは、はるかに楽ですし、甘いものが好き人にとっては、甘いものを食べるわけなので、気持ちも満たされると思います。

 

 

最後に、

キシリトールには、以上のように、潜在的なむし歯リスクを下げることができる可能性があります。しかし、これはあくまで「補助的な」対策になります。

むし歯予防において、その基本である「ハミガキ」は絶対に必要不可欠です。

ハミガキをしないでいるとむし歯菌の量も増えます。

いくらキシリトールがむし歯菌を弱らせる作用があるかもしれないといっても、敵の「数」が多くてはその効果は充分発揮できません。

「キシリトールガムさえ噛んでいれば、ハミガキをしなくてもむし歯にならない」とはならないのです。

ハミガキも必ず毎日行い、その上で、キシリトールによる対策を行って下さい。