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むし歯予防

むし歯菌を弱らせる方法

みなさんこんにちは。

今回は、お口の中に潜んでいるむし歯菌を弱らせる方法についてご紹介します。

 

 

潜在的なむし歯のリスクとして、棲みついているむし歯菌の「強さ」があります。

むし歯菌が強いと、ハミガキをより念入りにしていなければ、すぐに新しいむし歯ができてしまいます。

逆にむし歯菌が弱いと、少々ハミガキをサボったとしても、すぐにすぐむし歯になることはありません。

これまで一度でも、むし歯になった経験のある方は、このむし歯の「潜在リスク」が高い可能性があります。

この潜在リスクを下げることで、よりむし歯になりにくくすることができる可能性がありますので、是非取り組んでみてください。

 

 

さて、まず結論から申し上げますと、それは、

 

「毎日、キシリトール製品を食べる」

 

という方法です。

 

 

まずはキシリトールについて、ご説明します。

 

キシリトールとは、数ある「むし歯の原因にならない甘味料」のひとつです。

「甘味料」とは、人間がお口に含んだ時に「甘い」と感じる物質の総称です。

代表的なものは、「砂糖(ショ糖)」「果糖」「乳糖」「オリゴ糖」などの「糖類」ですが、糖類に分類されるもの以外にも、アミノ酸に分類される甘味料があったりします。

 

そして、糖類の中でもさらに「糖アルコール」と分類されるものは、糖類としては例外的にむし歯の原因にならない性質をもっています。

 

キシリトールは、その糖アルコールのひとつなので、むし歯の原因にならない甘味料というわけです。

 

 

そして、さらに驚くべきことに、キシリトールについては、むし歯の原因にならないのみならず、むし歯菌を弱らせる作用もある、という報告があります。

 

キシリトールについての多くの研究はスウェーデンで行われています(スウェーデンは、「むし歯予防先進国」です)。そしてここ日本でも、キシリトールの研究がなされています。

 

ここでは日本で行われた研究をご紹介します。

 

この研究では、研究に参加して頂いたのは妊婦さんです。

ある産婦人科に来られている妊婦さんたちに、研究についてご説明し、賛同を得られた方を対象に研究が行われました。

まずは、参加した妊婦さん全員の、研究開始前のむし歯菌(ミュータンス菌)の量を調べます。

そして妊婦さんを2つのグループに分け、

①片方はキシリトールが含まれたガムを、

②もう片方にはキシリトールを含まないダミーのガムを

毎日噛んでもらい、これを1年間継続してもらったそうです。

その後、1年経過時にもう一度むし歯菌の量を調べたところ、むし歯菌の量が減っていた、というものです。

さらに、その「むし歯菌の数が少ない状況」が、ガム摂取をやめた後の少なくとも1年間は継続した、という結果も出ています。

 

この研究の画期的なところは、「ミュータンス菌」を減らすことができた、という点にあります。

「むし歯菌」という言葉は、むし歯を引き起こす力を持った細菌の総称で、実はその中で色々な種類の細菌がいます。

「犬」の中に「ポメラニアン」や「柴犬」などの種類があるようなものです。

 

歯医者の世界で、むし歯菌として昔から識別されていたのは、「ミュータンス菌」と「乳酸桿菌」と呼ばれる細菌です。

このうち、乳酸桿菌については、例えばそれまでハミガキをおろそかにしていた人がしっかりハミガキができるようになるなど、いわゆる普通の「むし歯予防の努力」で、数が減ることが分かっていました。

しかし、ミュータンス菌については、どれだけハミガキを頑張っても、フッ素を使っても、はたまたどんな抗生剤やうがい薬、消毒薬を使っても、その数を減らすことは不可能でした。

一時的に減ったとしても、すぐに復活してきてしまう、とても厄介なむし歯菌でした。

 

このように歯医者の歴史上、とても厄介な「超!悪玉菌」であったミュータンス菌ですが、先ほどご紹介した研究のように、キシリトールを摂取することによって、その量を減らし、弱らせることができる可能性が出てきたわけです。

 

つまり、見方を変えると、キシリトールはむし歯菌を弱らせることのできる唯一の「薬」と捉えることもできます。

 

なので、これまでむし歯になった経験のある方は、少なくとも1年間、研究の方法に準じた形でキシリトールを摂取し、1年経過後も、ちょくちょくキシリトールを摂取することで、むし歯菌を弱らせて、さらにそれを維持し、将来的なむし歯を予防できる確率を上げることができる可能性があります。

 

 

では、具体的にどうすればいいかを、これからご説明します。

 

先ほどご紹介した日本の研究によると、実際に摂取した1日あたりのキシリトールの量は3.83gであったそうです。

また、その他のスウェーデン等のキシリトール研究者の意見では、1日の推奨摂取量は5~10gだそうです。

なので、1日最低4gを目標にして、キシリトール製品を毎日食べること。

これをまずは1年間継続しましょう。

 

世の中に広く市販されているキシリトール製品は2種類で、ガムかタブレットになります。

 

オススメはガムです。

ガムは味がなくなるまで咬み続ける必要があるため、長時間キシリトールを作用させることができます。

また、咀嚼の刺激により唾液がたくさん出るので、このこともむし歯予防の一助になります。

 

一番有名なのは、ロッテの「キシリトールガム」で、パッケージを見ると、一粒あたり2gのキシリトールが入っているようです。

なので、1日あたり2~3粒を目標に食べるようにしましょう。

 

先ほどの研究では、1日3.83gのキシリトールを、回数を分けて摂取してもらったとのことなので、1回で1日量全てを食べるのではなく、朝、昼、晩など、回数を分けて摂取するようにしてください。

ちなみに個人的な意見ですが、夜寝る直前がいいのではと思います。

通常の砂糖を含むお菓子は、夜寝る前は厳禁です。

というのも、寝ている時は会話などのお口の動きが少なくなり、唾液の分泌量も減るので、砂糖を洗い流す作用が減り、むし歯のリスクが上がってしまうからです。

ですがキシリトールについては、これをむしろ逆用しましょう。

つまり、キシリトールガムを食べた後にそのままハミガキやうがいをせずに寝ることで、わざとにお口の中にキシリトール成分を残すようにします。

そうすることで、より長時間キシリトールという「薬」を作用させることができると考えます。

(ただ、この場合は、起床直後の「口臭」が強めにでる可能性があります。この口臭は、うがいやハミガキをすればすぐになくなりますが、それが嫌な方は、キシリトールのあとにうがいかハミガキをして寝ましょう)

 

・小さいお子さんでガムがまだ噛めない場合

・今まで詰め物やかぶせの治療がたくさんしていて、ガムを咬むと取れそうな場合

・そもそもガムが嫌いな場合

は、ガムではなくタブレットを摂取しましょう。

 

タブレット商品は、味のラインナップがとても豊富で、チョコレート味なんかもあったりするので、ガムの味に飽きてしまった場合にも有効です。

キシリトールの含有量は、商品によってバラつきがあります。

パッケージのどこかに記載されているものがほとんどですので、ご自身で計算して、1日の合計が4g以上になるようにしてください。

 

タブレットは、ガムと違って、かみ砕いて飲み込んで、すぐに食べ終わることができますが、できればアメのように「溶けるまでなめる」食べ方をして、なるべく長時間お口の中にとどめるようにしましょう。

 

 

ちなみに・・・

このキシリトールの「ミュータンス菌を弱らせる作用」については、実は否定的な意見もあります。

科学の世界では、たったひとつの研究の結果が100%正しい、ということにはなりません。

同じような研究をして、成功した結果もあれば失敗した結果もあります。その積み重ねによって、調べられたことが事実かどうかが、判明していきます。

キシリトールのミュータンス菌抑制効果についても、菌が減った研究もあれば、変化がなかったとする研究もあります。

なので、現時点では、あくまで「可能性」に過ぎませんが、可能性があるのであれば、やらないよりはマシです。

そもそもキシリトールはむし歯の原因にならない、ということは確実な事実なわけですから、少なくとも「普通のお菓子(むし歯の原因になるお菓子)」からキシリトール製品に置き換えるだけでも、未然にむし歯を防ぐことには変わりはありませんので、いずれにしろキシリトールは、お勧めです。

少なくとも、「しっかりしたハミガキ方法を練習する」手間よりかは、はるかに楽ですし、甘いものが好き人にとっては、甘いものを食べるわけなので、気持ちも満たされると思います。

 

 

最後に、

キシリトールには、以上のように、潜在的なむし歯リスクを下げることができる可能性があります。しかし、これはあくまで「補助的な」対策になります。

むし歯予防において、その基本である「ハミガキ」は絶対に必要不可欠です。

ハミガキをしないでいるとむし歯菌の量も増えます。

いくらキシリトールがむし歯菌を弱らせる作用があるかもしれないといっても、敵の「数」が多くてはその効果は充分発揮できません。

「キシリトールガムさえ噛んでいれば、ハミガキをしなくてもむし歯にならない」とはならないのです。

ハミガキも必ず毎日行い、その上で、キシリトールによる対策を行って下さい。

お子さんのむし歯予防⑤【12歳臼歯が生える時期】

今回は、12歳臼歯が生える時期のむし歯予防対策について解説します。

 

【12歳臼歯とは】

12歳臼歯は、その名の通り、12歳前後の時期に生えてくる永久歯で、前から数えて7番目の歯になります。

12歳臼歯は、6歳臼歯のさらに奥に、「追加」で生えてきます。

(たまに「親知らず」と勘違いされる親御さんがいらっしゃいますが、親知らずはこの12歳臼歯のさらに奥、8番目の歯で、生える時期は高校生以降になります)

ですので、ざっくり小学5年生~中学3年生ぐらいまででの注意点となります。

 

【似ているようで似ていない12歳臼歯と6歳臼歯】

歯の構造や生え方などの条件として、6歳臼歯と同じぐらい高いむし歯リスクがあります。

しかし6歳臼歯の時と違うのは、お子さん自身が成長し、お兄さん・お姉さんになっている、ということです。

つまり、親御さんの仕上げ磨きはもう完全にしない時期ですし、お子さんによっては思春期に入っている方もいるかもしれません。

また、中学校への進学の時期、あるいはそれに向けての受験の時期でもあります。夜に塾に行く子も多いと思います。

部活動もはじまります。

 

このように、6歳の頃とちがうのは、

・お子様ご自身で歯を守る努力をしなければならない

・受験や進学、部活により生活環境・生活リズムが変わりやすい、あるいは不規則になりやすい

という点です。

 

予防の主体がお子さんであり、さらに思春期となると親御さんが介入することも難しいので、今回は「親御さんができるサポート」という観点から、予防のヒントをお伝えしていきます。

 

【考え方は今までと同じ】

むし歯リスクの考え方自体は、これまでと変わりません。

「砂糖がお口の中に存在している時間(特に夜寝ている時)を短くする」

「フッ素入り歯磨き粉を使ったハミガキを毎日寝る前にする」

この2点が重要です。

 

このうち、ハミガキは、もはや親御さんがどうこうすることではないので、不安であれば歯科医院でハミガキ方法を教えてもらい、定期的にクリーニングもしてもらいましょう。(親御さんには反抗的でも、他人である歯科医院のスタッフの言うことは聞く・・・かもしれません)

ただ、夜、寝る前のハミガキは、何はなくともぜひともやってほしいところです。

夜寝ている間は、むし歯リスクが高まるので、その時間帯にお口の中の砂糖分をなくしておきたいからです。

まあ、勉強終わりの時間だと、ひょっとしたら親御さんの方が先に寝ている可能性もあるので、これも結局は本人に委ねるしかないのかもしれませんが・・・

 

【食事のコントロールについて】

砂糖のこと、つまり「食生活」については、「買い食い」を除いて親御さんがまだコントロールできる余地があるので(食事は親御さんが用意すると思います)、この時期にできることをご説明します。

 

≪夜の勉強の時に与えるもの(お夜食)≫

夜遅くまで塾に通っている、あるいは遅くまで自分の部屋で勉強する、というお子さんが多いと思います。

勉強する時には脳のエネルギーとして「糖分(ブドウ糖)」が必要になります。

なので効率的な勉強のためには、糖分摂取が必要になります。

糖分摂取として手っ取り早いのは「お菓子」ですが、それをダラダラ食べながら勉強をしていると、あっという間にむし歯になってしまいます。

いわゆるお夜食として提供するとしたら、おにぎりやうどんなど、「お菓子」ではなく、エネルギーになる「炭水化物」を含んだ「食事」系のものにしましょう。

そして、勉強しながら食べるのではなく、一旦鉛筆を置いて、休憩も兼ねてササっと食べちゃいましょう。

むし歯リスクの観点から食事時間は短い方がいいのですが、勉強しながらだとダラダラ食いになる可能性があるためです。

 

どうしても甘いものがいい!というお子さんにお勧めなのが、キシリトールガムです。

キシリトールというのは、むし歯の原因にならない甘味料です。

そのため、キシリトールガムは、どんなにたくさん食べてもそれだけだと絶対にむし歯になりません。

また、ガムを咬む「咀嚼」という運動は、勉強への集中力を高めてくれるとも言われています。

 

そして、飲み物はジュースではなく、お茶にしましょう。

 

≪運動時のエネルギー・水分補給≫

スポ少や部活など、スポーツをしているお子さんも少なくないと思います。

スポーツをする上で大切なのが、エネルギーと水分です。

スポーツでは、勉強と違って、急激にエネルギーと水分が消耗していきます。

また、下手に満腹になってしまうと、うまいこと体を動かすことができなくなってしまいます。

なので、競技途中でのエネルギーと水分補給に最も適しているのはスポーツドリンクだと思います。

しかしスポーツドリンクそのものは、糖分を大量に含むのでむし歯のリスクを上げてしまいます。

また、競技中であればチビチビ飲む、という飲み方にもなり、よけいにリスクが上がってしまいます。

 

ここでできる工夫としては、

スポーツドリンクのあとは、毎回麦茶か緑茶を飲む

ということです。

最後にお茶を飲めば、お口の中の糖分が胃に洗い流されていきます。

(少し不作法かもしれませんが、お茶を飲みこむ前に「ブクブクうがい」をすると、よりしっかりと砂糖分を排除できます)

あるいは、水道水でうがいをする、というのも有効です。

要はお口のなかから糖分を追い出せればそれでいいわけです。

麦茶は、体をクールダウンさせてくれる作用があります。

緑茶は、カテキンフッ素が含まれているので、むし歯予防に有効です。

また、許される競技であれば、競技中にキシリトールガムを咬むのもいいと思います。

 

以上が、12歳臼歯が生える時期のむし歯予防のポイントです。

 

【今までにむし歯ができたことがある場合】

今までにむし歯ができたことがあるお子さんは、むし歯のリスクが高い可能性があります。

「食生活」や「ハミガキ習慣」が原因の可能性がありますので、今回ご紹介した内容に加え、これまでの年齢別にご紹介してきた内容にもヒントは盛りだくさんなので、そちらをご覧になってください。

また、むし歯の「潜在的なリスク」として、棲みついているむし歯菌が強くなってしまっている可能性があります。

むし歯菌を弱らせるための対策は、こちらをご覧ください【むし歯菌を弱らせる対策】

 

 

 

 

その他のリンク

お子さんのむし歯予防①【はじめに】(知っておいてほしい基礎知識)

お子さんのむし歯予防②【乳歯の前歯のみ生えている時期】(6か月~1歳3カ月ぐらい)

お子さんのむし歯予防③【乳歯の奥歯の生え始め~永久歯が生え始める前】(1歳4か月~6歳)

お子さんのむし歯予防④【6歳臼歯が生える時期】(5歳~9歳)

 

お子さんのむし歯予防④【6歳臼歯が生える時期】

今回は、6歳臼歯が生える時期のむし歯予防のポイントを解説します。

 

【歯の生え変わりについて】

≪6歳臼歯が生える時期と生え方≫

歯の生える時期にはかなり個人差がありますが、6歳臼歯は早い子だと5歳代から生え始めます。

この歯は、すべての歯の中で一番大きい歯です。

そのため出てくるスピードが遅く、しっかり生えきるまでおおよそ1年半ほどかかります。

 

どのように生えてくるかですが、

まずは歯茎の一部をやぶって、歯の一部分が姿を現します。

その後、徐々に歯を覆っている歯茎が少なくなり、咬み合わせの部分が全て見えるようになります。

そして、その後ゆっくりと上昇して、他の歯と同じ高さに揃います。

歯茎をやぶるのに半年、のぼってくるのに1年、といったところでしょうか(歯が生えるペースも、かなり個人差があります)。

 

 

 

ちなみに、同時期に前歯の生え変わりも起こります。

 

≪永久歯の生え方について≫

ここで一度、永久歯の生え方について整理しておきます。

永久歯が生えてくるときには、

乳歯が取れて、その下から生えてくるパターン(「生え変わり」パターン)

と、

一番後ろの歯のさらに後ろに、新たに追加で生えてくるパターン(「追加」パターン)

の2種類があります。

 

この時期の場合、

6歳臼歯は「追加」パターン

前歯は「生え変わり」パターン

になります。

 

 

 

【6歳臼歯をむし歯にしないための特別な配慮(仕上げ磨き)】

≪6歳臼歯は、とっても大事!≫

さて、この時期のむし歯予防の最大の課題は、

「6歳臼歯を死守する!」

ということです。

他の永久歯ももちろん大切なのですが、数ある永久歯の中でも6歳臼歯は最重要な歯です。

 

この歯は咀嚼の中心であり、噛みしめ時にもしっかりアゴを支えるなど、歯の機能の根幹を担う歯です(そのために一番の大きさがあります)。

 

歯というのは、食事はもちろんのこと、スポーツをするときにも重要な器官です。

人間、大きな力を発揮したり、何かに集中したりするときには噛みしめるためです。

この噛みしめがうまくできないと、スポーツのパフォーマンスも落ちてしまいます。

 

この大切な6歳臼歯を守り切れるか否かで、その子の人生が変わるぐらい、とても重要な歯なのです。

 

しかしながら、こんなに大切な歯なのに、生えている途中はとてもむし歯になりやすい状況にさらされる歯でもあります。

 

≪6歳臼歯がむし歯になりやすい理由≫

なぜそのような状況になってしまうのか?

その理由には、次のようなことがあげられます。

 

・乳歯のご説明の時にもお話しましたが、歯は生えたての時はまだ未完成で、出てきた後でフッ素やカルシウムを取り込んで完成します。これは6歳臼歯も同じで、生えている途中の歯は、元々むし歯になりやすいリスクを負っています

・生えている途中段階では、歯茎が中途半端に歯をおおっている状態になります。6歳臼歯は、一番奥の乳歯の、さらに奥に生えてきますので、生えている範囲が狭いうちは親御さんによる目視が難しいため見逃しやすく、対策が遅れてしまう可能性があります。

・同じく、中途半端に覆っている状態だと、汚れがたまりやすく、かつ磨くことも難しい状況になります。(磨こうと思ったら、歯ブラシの毛先を水平にして歯と歯茎のすきまに入れ込んで、歯茎をめくるようにしないといけません。これにはかなりテクニックが要ります)そのため、歯茎の下の部分が不潔になりやすく、むし歯のリスクが上がってしまいます。

・その後、おおっていた歯茎がなくなったとしても、生えている途中の歯は背が低いため、意識して磨かないと歯ブラシの毛先が届きにくい状態になります。

・そして6歳臼歯はしっかり生えきるまで時間がかかるので、そのように磨きが甘くなりやすい時期が長くなります

・6歳臼歯は「奥歯」なので、元々の構造として歯の表面に溝がたくさんあります。溝の部分はくぼんでいるため、歯そのものの構造として、汚れがたまりやすい形になっています。

 

以上のような条件から、生えている途中の6歳臼歯はむし歯のリスクにさらされる危険性がかなり高いです。

 

そのため、6歳臼歯がしっかりはえきるまで、特別な配慮が必要になります。

 

≪6歳臼歯を死守する方法≫

とはいっても、やることは実に単純で、要は「6歳臼歯の部分を念入りに磨く」ということです。

ちなみにこの時期は、年齢的にまだお子さん一人で「きちんと磨く」ということは難しいため、親御さんによる仕上げ磨きを必ずしてあげましょう。

 

それでは、具体的になにをすべきかをご説明します。

 

まずは、日々の仕上げ磨きの時に、乳歯の奥歯の、「さらに奥」をよく見て、生えてきているかどうかをしっかり確認してください。(生えてきていることを見逃さない!)

自信がない場合は、歯医者さんで診てもらってもいいと思います。

歯医者さんで定期的にフッ素塗りに通っている方は、この時期だけ期間をせばめてフッ素を塗ってもらうことも有効です。

(当院では、実際にこの時期のお子さんには健診間隔をせばめることをお勧めしています)

 

生えているのが確認できた場合は、仕上げ磨きの時に少し工夫をします。

まずは、歯磨き粉を、一番最初に6歳臼歯の表面に塗ります(上下左右4本とも生えてきている場合は、4本とも全てに塗る)。

歯磨き粉の中にはフッ素が含まれています。

ハミガキをしていると、刺激により唾液がたくさん出てきます。

そうなると、歯磨き粉と唾液が混じってフッ素の濃度がどんどん薄まります。

つまり、歯磨き粉のフッ素濃度は、出したての時が一番高いということになります。

 

しっかりフッ素を効かせたいので、薄まる前にまず表面に塗っちゃおう!

 

という作戦です。

そして、そのまままずは6歳臼歯を念入りに磨いてください。

まだ生えている途中で高さがない場合は、しっかり毛先を届かせるよう意識をしないと「空振り」になりますので、注意して磨いてください。

その後で、他の歯を磨きます。

これを毎日、寝る前にして、6歳臼歯を死守しましょう!

 

≪「仕上げ磨き」について≫

ちなみに、親御さんによる仕上げ磨きですが、当院ではその終了時期(つまりお子さん一人だけで磨き始める時期)を、おおむね9歳が過ぎた頃としています。

9歳ぐらいになると、お子さん自身の成長により、自分でハミガキができる「器用さ」が充分になるからです。

その器用さにも個人差があるとは思いますが、その目安として、自分で爪切りができるぐらいの器用さが備われば、ある程度細かいハミガキも可能と考えています。

ただ、器用さが備わっても、そもそも正しいやり方を知らなければ、できません。

なので、不安な場合は歯医者さんに行って、歯科衛生士さんに教えてもらいましょう。

ある程度の練習も必要なってくると思います。

 

 

【おやつコントロールについて】

≪おやつはルールを守って与える≫

おやつコントロールについては、前回の内容とほぼ同じです。

未読の方は、こちらを参考にして下さい。

お子さんのむし歯予防②【乳歯の前歯のみ生えている時期】(6か月~1歳3カ月ぐらい)

ルールを守って、正しくおやつを食べるようにしましょう。

 

≪おやつコントロールにおいても、6歳臼歯への配慮が必要≫

ただし、ここでも6歳臼歯に注意する必要があります。

6歳臼歯が生えかけの時は、その歯が低い位置にいます。

そのため、特にハイリスクのお菓子(チョコ・キャラメル・ハイチュウ)はその低くなっているところに入り込み、残りやすくなります。

前述したように、低いがゆえに、ハミガキもしにくい場所です。

さらに、これらのお菓子はネッチョリしているので、取れにくい状態でもあります。

つまり、

入り込みやすく、

残りやすく、

取り除きにくい

状態です。

これがいかに危険な状態かおわかりいただけるでしょうか?

このことを考えると、少なくとも6歳臼歯がある程度しっかり生えてくるまで(高さが手前の歯の半分ぐらいになるまで)は、ハイリスクのお菓子は食べない方がいいと思います。

 

≪リスクに応じて、おやつの与え方を変える≫

ただ、この年齢になると、お子さん自身の経験値もかなり豊富になり、ハイリスクお菓子のおいしさをすでに知っているお子さんも多いと思います。

前回もご説明した通り、抑制しすぎによる「反動」の危険性も考えると、多少は与えざるを得ないかもしれません。

 

なので、折衝案として、

前回までご紹介したむし歯予防対策に取り組んでいて

かつ

今までむし歯が実際にできていない

お子さんの場合は、リスクは低く抑えられているので、ハイリスクお菓子を多少与えても、問題はないと思います。

ただし、ルールはしっかり守ってください。

 

今まで一度でもむし歯の経験があるお子さんは、残念ながらリスクは高いです。

ハイリスクお菓子を食べないに越したことはありませんが、万が一食べる場合は、食後に必ず親御さんによる仕上げ磨きをしてあげてください。

もちろん歯磨き粉を使って。

それができないのであれば、やはり与えるべきではないです。

ルールを守って、ゼロミドルリスクのお菓子を食べることで我慢しましょう。

また、むし歯経験があるお子さんは、その「潜在的なリスク」として、棲みついているむし歯菌が強くなってしまっている可能性があります。

むし歯菌を弱らせるための対策にも取り組んでみましょう。

詳細はこちらをご覧ください【むし歯菌を弱らせる対策】

 

 

以上が、6歳臼歯が生える時期のむし歯対策です。

同時期に前歯の生え変わりもありますが、前歯は6歳臼歯ほどむし歯のリスクが高まる要因が多くはないですし、磨きやすい位置にもありますので、特別な配慮はいらないと思います。

 

【この時期を過ぎてしばらくは、むし歯リスクは小康状態になる】

この時期を過ぎて、3年生~5,6年生までのあいだで、前歯と6歳臼歯の間にある歯(犬歯・小臼歯)が生え変わっていきます。(全て「生え変わり」パターンです)

これらの歯も、6歳臼歯ほどはリスクは高くないので、むし歯リスクとしてはしばらく小康状態となります。

もちろん油断は禁物ですが、この時期は6歳臼歯ほどの特別な配慮までは必要ないと思います。

 

 

今回は以上です。

次回は、【12歳臼歯が生える時期】(小学5年~中学3年)について解説していきます。

 

その他のリンク

お子さんのむし歯予防①【はじめに】(知っておいてほしい基礎知識)

お子さんのむし歯予防②【乳歯の前歯のみ生えている時期】(6か月~1歳3カ月ぐらい)

お子さんのむし歯予防③【乳歯の奥歯の生え始め~永久歯が生え始める前】(1歳4か月~6歳)

お子さんのむし歯予防③【乳歯の奥歯の生え始め~永久歯が生え始める前】

今回は、乳歯の奥歯が生え始めて乳歯の歯並びが完成する時期(永久歯が生え始める手前)のむし歯予防のポイントを解説します。

歯の生え方はかなり個人差がありますが、1歳4か月~6歳ぐらいまでの時期になります。

 

この時期は、自分で歩けるようになり、言葉も覚え、保育園・幼稚園に通いはじめるなど、行動範囲がかなり広がっていきます。

そのため、食べれるものも増えますし、食事の経験値も増えます。

社会とのかかわりも増えます。

そして、お子さん自身からの主張も増えていきます。

 

このことも踏まえて、むし歯対策をしていきましょう。

 

 

【おやつコントロール】

≪この時期からは「おやつゼロ」はかえって良くない≫

前回の年齢(6か月~1歳3カ月)では、お菓子は極力与えない方がいい、とアドバイスしました。

しかし、成長してくるにつれ、お子さんに物心がつき、経験値も上がり、「世の中に甘いおいしいものがある」ということに気づき始めます。

これぐらいの年齢になってくると、お菓子を「全く与えない」ということは、かえって弊害を生む可能性が出てきます。

 

お菓子を与えなければ、確かに「むし歯リスク」は低くできます。

しかし人間は感情のある生き物です。

あまり極端に抑制しすぎると、「反動」が起きる可能性が高まります。

 

例えば、これから先、小学生になってさらに智恵がついてくると、親の見ていないところでこっそり食べるようになるかもしれません。

また、大学進学などで親元を離れてから、タガが外れたように我慢させられていたお菓子にドはまりする可能性もあります。

過度な抑制は、こういった将来のリスクの種になる可能性があります。

 

そのため、この時期からは、極端に抑制するのではなく、適度におやつを与えて「ガス抜き」をし、また「おやつの正しい食べ方」を身に着けさせた方が、長い目で見て、いいと思います。

 

≪おうちの「おやつルール」を決めよう!≫

というわけで、この時期は、家庭内でおやつルールを決めて、

「ルールを守りながら」「適度に」与えるようにしましょう。

 

「おやつルール」は、不用意にお菓子を食べる回数を増やさないため、あるいはダラダラ食べることを防止するために設定します。

 

ルールの内容は各家庭の状況に合わせて設定してくださって大丈夫なのですが、初回に解説した

1日のうちのおやつの回数を減らす

ダラダラ食い・ダラダラ飲みをしない

なるべくリスクの低いものを選ぶ

寝る前にリスクのあるものは与えない

の4つのポイントを守るルールにしてください。

 

例えば、

・おやつはお昼ご飯と晩御飯のあいだの1回のみ。

・おやつに何を食べるかは、親が決める。(子供に選択権を与えない)

・おやつは幼稚園から帰って手を洗ったら食べれる。(手を洗わなかったら食べれません!)

・食べる時間は15分とし、それが過ぎたら残っていても没収。

・夜ご飯が完食できなかったら、次の日のおやつの量を減らす。

・祖父母の家など、よそでおやつをもらった日は、家でのおやつはなし。

・おやつを食べる時は、必ず親の許可を得てから。(勝手に出して食べない)

といった具合です。

 

そして、作ったルールを家族全員が把握し、必ず守ることが大切です。

お母さんだけでなく、お父さん、兄弟、祖父母にも協力してもらって、ルールをきちっと守りましょう。

 

≪こういった行動に注意!≫

この時期にやってしまいがちな、良くない行動を例示します。

・出先などで子供が泣いてしまい、泣き止ますためにお菓子を与える。

・何かができた時の「ご褒美」としてお菓子を与える。

・スーパーのお菓子売り場などでせがまれて、お菓子を買い与える。

 

特に子供にせがまれたり、ぐずったりするからといって、安易にお菓子を与えてはいけません。

それは子供にとって良くない「成功体験」となり、味をしめた場合は次回もするようになってしまい、次も、そのまた次も・・・と、収集がつかなくなってしまいます。

お菓子やジュースを買う・食べる行為については、絶対に子供に主導権を与えてはいけません

 

≪おやつとして与えるものについて≫

与えるものは、ゼロリスクローリスクもしくはミドルリスクのお菓子にしましょう。

甘いものにこだわりがない場合(おなかが満たされればいい場合)は、おにぎりやお茶漬け、おかずの残りなどの「食事」系のものもおすすめです。

 

ハイリスクのお菓子は、まだ早いです。子供はまだ人生経験が浅いため、食べたことのないもののおいしさは、知りません。

知らなければ、要求してくることもありません。

なので、ハイリスクお菓子の味を知るのは、遅くできるのであれば遅くするに越したことはありません。

 

≪よそでもらうものは、素直にいただきましょう≫

とはいっても、たまによその家(お友達の家や祖父母の家)でお菓子が出されることがあると思います。

その時には食べていいと思います。

せっかく用意してくれたお菓子をお断りするのは、社交的な観点からよくないからです。

しかし、その後お家に帰った後で、そこで出されたものが食べたいと言ってきても、「あれはよそのおうちでしか食べられない特別なもの」と説明して、家では絶対に買わないようにしましょう。

 

 

【ハミガキについて】

一日一回のハミガキは必須です。

目的は

「歯の汚れを落とすこと」

「ハミガキの習慣付けをすること」

で、前回(前歯のみ生えている時期)は「習慣付け」がメインでしたが、この時期からはいよいよ歯の汚れを落とすことも重要になってきます。

 

本人磨きもぼちぼちはじめていきますが、まだ手先の器用さが未熟なため、正しいハミガキはできません。

「歯ブラシを口の中に突っ込んで動かしているだけ」というのが実際のところです。

なので、親御さんによる仕上げ磨きは必ずしてあげてください。

 

使うのは、子供用歯ブラシと、歯磨き粉です。

歯みがき粉は絶対に使いましょう。歯磨き粉に含まれているフッ素成分が歯を強くしてくれるからです。

量は、歯ブラシの毛の部分の長さぐらいです。

上手にできるのであれば、子供用のフロス(糸ようじ)を使って、歯と歯のあいだもきれいにしましょう。

 

奥歯は前歯に比べて形が複雑で、かつお口の奥の方にあるので、歯ブラシが届きにくく、磨きが甘くなりがちです。

 

磨く際の具体的なポイントについては、「歯並び」や「上手にお口をあけられるか」などの条件による個人差が大きいので、歯医者に行って歯科衛生士さんの助言を得るのがいいと思います。

 

嫌がってできない場合の対策は、前回(前歯のみ生えている時期)の最後の方に記載していますので、そちらをご覧ください。

 

 

 

【すでにむし歯ができてしまっている場合】

この時期にすでにむし歯ができているお子さんは、残念ながら、現状ではむし歯のリスクが高い状態であると言わざるを得ません。

生まれてきてから今までの「食生活」や「ハミガキ習慣」が原因の可能性がありますので、まずは今回ご紹介した内容で、できることから取り組んでいってください。

また、むし歯の「潜在的なリスク」として、棲みついているむし歯菌が強くなってしまっている可能性があります。

むし歯菌を弱らせるための対策は、こちらをご覧ください【むし歯菌を弱らせる対策】

 

 

 

今回の内容は以上です。

次回は、【6歳臼歯が生える時期】(5歳~9歳)について解説していきます。

 

お子さんのむし歯予防①【はじめに】(知っておいてほしい基礎知識) 

お子さんのむし歯予防②【乳歯の前歯のみ生えている時期】(6か月~1歳3カ月)

お子さんのむし歯予防⑤【12歳臼歯が生える時期】(小学5年~中学3年)

お子さんのむし歯予防②【乳歯の前歯のみ生えている時期】

今回は、乳歯の前歯のみ生えている時期のむし歯予防のポイントについて解説していきます。

歯の生え方にはかなり個人差があるのですが、今回の対策はおおむね6か月~1歳3カ月ぐらいになると思います。

 

【おやつコントロール】

 

≪この時期は「おやつなし」が基本≫

お口の中には、さまざまな細菌が生息しています。

その中には、むし歯菌のような「悪玉菌」もいれば、特に体に害を及ぼさない「無害な菌」もいます。

それらの菌のバランスは人によってさまざまで、その違いによってむし歯のなりやすさが変わってきます。

 

生まれてから3歳ぐらいまではこの細菌バランスはとても変動しやすいと言われています。

 

そのため、この時期に砂糖の摂取量が多いと、それをエサにしているむし歯菌ばかりが元気になり、他の無害な菌を駆逐してしまいます。

この状態で3歳を迎えると、むし歯菌が優勢となり、むし歯になりやすい口腔内環境ができあがってしまいます。

 

逆に、3歳までに砂糖の摂取量を控えていると、むし歯菌が無害な菌に駆逐されてしまい、むし歯になりにくい口腔内環境ができあがります。

(3歳を過ぎても、あまりにも砂糖の摂取が多かったりすると、細菌バランスが崩れる可能性はありますが、細菌バランスの変動のしやすさの観点では、3歳までが特に要注意です)

 

 

 

お口の中の細菌への砂糖の供給源は、その子が食べたものです。

当然のことですが、低年齢のお子さんは、親御さんが用意した食事を食べます。

なので、むし歯になりやすいか・なりにくいか、どちらの口腔内環境になるかは、親御さんが与えた食べ物・飲み物に100%影響されることになります。

 

そして、お菓子は、買わないと手に入りません。(もらうものもあるとは思いますが、日常的に買うお菓子と比べると、その量はたかが知れていると思います)

 

つまり、この年齢のお子さんにお菓子を買い与えるということは、

「わざわざお金をかけて」

将来お子さんを苦しめることになるであろう敵を、ご丁寧に

「育成している」

ということになります。

「敵に塩を送る」といったところでしょうか(送っているのは砂糖ですが)

こんなバカげたことはないと思います。

 

以上のことを考えると、口腔内環境に大きな影響を及ぼすとても大切なこの時期に、わざわざお菓子を買い与えることの愚かしさに気が付かれると思います。

 

なので、この時期には基本的には、「おやつなし」がいいと思います。

 

 

≪栄養補助は、「食事」回数を増やすことで解決する≫

「おやつ」には栄養補助的な側面もありますが、そもそもこの時期は栄養的にみて補助的に「砂糖」が必要な状況はほぼありえないと思います。

 

この時期のお食事は、母乳・ミルク・離乳食がメインになります。

低年齢だと胃が小さいため、朝昼晩の3食に加えて合間で栄養補給する必要はあります。

しかしその場合でも、安易にお菓子で済ますのではなく、離乳食やおにぎりなど、お菓子以外のものを与えて栄養補助としましょう。

(「おやつ」ではなく「食事」の回数をもう1、2回増やすイメージです)

 

≪それでも、どうしてもお菓子を与えたい方へ≫

お菓子を与えるにしても、赤ちゃん用として販売されているもの(赤ちゃんせんべいや赤ちゃんボーロなど)を与えましょう。

フルーツもOKです。

初回でご紹介したミドルリスクハイリスクのお菓子は、この時期には与えないようにしましょう。

ジュースは、赤ちゃん用でも砂糖が入っているので、水分補給はお茶(ベビー麦茶)やお水、ミルクにしましょう。

水分補給といえば清涼飲料水が思い浮かぶ方もいるかもしれません。

清涼飲料水にも、結構な量の砂糖が入っています。

熱中症になってしまって緊急性がある場合は別ですが、普段から飲ませることはやめましょう。

また、寝かしつけのため?ミルクやジュース入りの哺乳瓶を寝る時にくわえさせる親御さんがいると聞いたことがあります。

寝ている時はむし歯リスクが上がりますので、これもやめておきましょう。

 

≪おやつコントロールのポイントまとめ≫

・基本的には、おやつなし

・栄養補助には、お菓子以外のもの(離乳食、おにぎりなど)を与えましょう

・お菓子を与えるにしても「赤ちゃん用」のものを。普通のお菓子はNG

・水分補給はお茶・お水・ミルクにして、ジュースは与えない

 

 

【ハミガキについて】

≪この時期の目的は「ハミガキ習慣の習慣付け」≫

この時期はもちろん自分ではみがけませんので、親御さんによるハミガキが必須になります。

一日一回、寝る前に、親御さんがお子さんのハミガキをしてあげましょう。

 

この時期のハミガキの目的は、「汚れを落とすこと」より、「ハミガキの習慣付け」の意味合いの方が大きいです。

まだ物心がついていない時期から、一日一回ハミガキを必ずしていると、その子の中で「毎日のルーティンワーク」としてハミガキが確立され、ハミガキをすることが「当たり前」になります。

 

この「当たり前」が、非常~に重要なんです。

 

というのは、物心がついたあとで、新たな生活習慣を身に着けさせるのは、かなり大変だからです。

 

これをご覧になっている方も、自分が子供の頃を思い出してみてください。

例えば、親御さんから、「外から帰ってきたらすぐに手洗いうがいをしなさい」と言われた場合、素直に実行できていたでしょうか?

めんどくさがってしなかった経験はないですか?

 

そして、物事がよく理解できるはずの大人ですら、生活習慣を改めることはかなり難しいです。

例えば、今から「寝る前に毎日腹筋運動を10回やってください」と言われて、今後の人生において絶対に毎日続けられる自信がありますか?

 

このように、はみがきの習慣付けを「あとまわし」にしてしまったら、後から身に着けることにはかなりの困難が待ち受けています。

まだ物心がついていない「今」がチャンスですし、簡単に習慣づけできるのは「今」しかありません。

 

≪ハミガキのやり方≫

使う道具は、子供用の歯ブラシもしくはハミガキシートです。

が、後述しますが歯磨き粉もできれば使った方がいいので、そのことを考えると、ハミガキシートよりは歯ブラシの方が扱いやすいと思います。

 

磨く対象の歯は少ないので、時間はかけなくていいです。

上下合わせても10秒ぐらいでしょうか。

 

≪「楽しそうに」する≫

そして、最も重要なポイントは、

「楽しそうに」やることです。

 

基本的に動物にとって「口」というのは、生き延びるために最も重要な栄養摂取の入り口であり、さらに肉食動物にとってはその栄養源となる獲物を捕らえる「武器」でもあるため、とても大切な器官です。

そのため、人間を含めた動物は本能的にお口周りを他人に触られるのを嫌がります。

これは低年齢児も同じです。

この、「本能的に嫌なこと」をいかにうまく受け入れさせるか?が課題になります。

 

そのための対策が、楽しそうにやることです。

お子さんは親御さんの「楽しそうな姿」「笑っている姿」に安心感を覚えます。

なので、本能的にはしてほしくないこと(口を触られること)を、親御さんが楽しそうに、お遊戯のひとつであるかのようにすることで、『ハミガキは楽しいことなんだよ~』と、いい意味で「騙して」あげましょう。

いきなりお口の中に歯ブラシを入れるのではなく、『これからハミガキするよ~』と笑顔でいいながら、まずは楽しそうにお口まわり(ほっぺやくちびる)をプニプニしてあげるのもいいかもしれません。

 

逆に、子供は親御さんの怖い顔はキライです。(私も、家内の怖い顔はキライです)

真面目な親御さんほど、「ハミガキしなきゃ!」と思って真剣な顔つきになりがちです。

「真剣な顔」=「怖い顔」です。

おやつコントロールができていれば、少々みがけていなくても大してリスクは上がりませんので、完璧に汚れを取る必要はありません。

気を楽にして、お子さんとのスキンシップの一環として、ハミガキを楽しそうにしてあげてください。

そしてハミガキを楽しそうにするためにも、「おやつコントロール」の方は、完璧にしておきましょう。

 

≪歯みがき粉について≫

歯みがき粉は、使った方がベターです。

この時期は、前歯が生えはじめてからあまり時間が経っていません。

 

歯は、実は生えてからしばらくはまだ未完成で、生えてきたあとでフッ素カルシウムを取り込むことでより強靭になり、完成していきます。

「たけのこ」(生えたて)と「竹」(完成)のイメージでしょうか。

なので、生えたての歯というのはその歯にとっては一番むし歯になりやすい時期なのです。

 

リスクを減らすには、なるべく早く「たけのこ」から「竹」に成長させてあげることが必要です。

そのための手段として、歯磨き粉を使いましょう。

現在市販されているハミガキ粉のほとんどに、薬用成分(歯を強くする成分)としてフッ素が配合されています。

毎日のハミガキの時に歯磨き粉を使うことで、フッ素を浸透させ、歯の完成を早めることができます。

 

この時期の歯みがき粉の量は、米粒ひとつぶぐらいで大丈夫です。

これを歯ブラシの毛先に出して、ハミガキをしましょう。

 

うがいはできなくて大丈夫です。

というより、うがいをしない方が、フッ素成分が残ってむし歯予防には有利です。

しかし、私の息子も、その狙いがあってうがいをしないようにしていたのですが、朝起きた時の「口臭」が強めに出てくるようになった、という経験があります。

起床後に一回でも飲食すればその臭いは消えるのですが、これが気になる方は、ハミガキのあとにお茶かお水を飲ませてあげると、残った歯磨き粉が胃の方に洗い流されていきます。

 

≪ハミガキを嫌がるお子さんへの対策≫

よく親御さんから相談を受けることに、

「すごく嫌がってハミガキをさせてくれない」

ということがあります。

その対策として、前述した「楽しそうにやる」ということも一つの手です。

他の対策として、

NHKの「おかあさんといっしょ」の番組内にある「はみがきじょうずかな」を親子で見たり、

ハミガキを楽しそうにしている絵本を読んであげたりする、

といった対策もあります。

 

そして、前に比べてちょっとでも出来るようになったことがあったら、嬉しそうにして、子供をほめることです。

『わあすごい!昨日は上の歯しかハミガキできなかったけど、今日は下の歯もできたよ!ありがとう!』とオーバーめにほめて、頭をなでてあげてください。

心の中では、『今日も泣くばっかりしてイライラするわ~』と思っていることと思います。

お気持ち、分かります。

でも、それでも、子供の前ではそれを隠して、がんばって演技してみてください!

信じられないかもしれませんが、

子供の行動変容を起こす一番の近道は、「できないことを叱る」のではなく、「出来たことをほめる」こと

です。

(これは息子がお世話になった幼児教育の先生方から、実際に教わったテクニックです)

 

また、実際どれだけ嫌がっても、絶対に1日1回はハミガキしましょう。

押さえつけてでも、しましょう。

ハミガキはあくまでお子さんのためにやっていることで、いじわるでやっていることではありません。

むしろ親の愛情があるからこそ、やることです。

成長して理屈が理解できるようになってくれば、ハミガキの必要性・親の気持ちも分かるようになってきます。

それまでの辛抱です。

ここで妥協しては、ハミガキの習慣付けの目標が達成できなくなり、結局将来苦しむことになります。

 

≪ハミガキのポイントまとめ≫

「習慣付け」が第一目標

「楽しそうに」磨いてあげる!

・米粒ひとつぶ程度の歯みがき粉を、必ず使う

・嫌がっても絶対にハミガキは、する

・ハミガキが終わったら、しっかりほめる

 

今回は以上です。

次回は、【乳歯の奥歯の生え始め~永久歯が生え始める前】(1歳4か月~6歳ぐらいまで)
について解説していきます。

 

その他のリンク

お子さんのむし歯予防①【はじめに】(知っておいてほしい基礎知識)

お子さんのむし歯予防④【6歳臼歯が生える時期】(5歳~9歳)

お子さんのむし歯予防⑤【12歳臼歯が生える時期】(小学5年~中学3年)

お子さんのむし歯予防①【はじめに】

みなさんこんにちは。

本シリーズでは、お子さんのむし歯予防について、歯が生える時期ごとに、その時々のポイントを解説していきたいと思います。

 

今回は、その前の基礎知識といいますか、全年齢に共通した注意事項や知っておいてほしいことをまずお話ししていきます。

 

【むし歯予防の2つのポイント】

むし歯予防には、

 

① ハミガキがきちんとできているか?

②おやつのコントロールができているか?

 

この2つが重要になってきます。

 

≪どちらを優先すべきか?≫

これら2つは、両方とも同じぐらい重要なのですが、対策の取りやすさから考えると、断然、②のおやつコントロールの方がやりやすいと思います。

というのも、ハミガキというのはとても身近な生活習慣でありながら、実は「きちんと」しようと思うとかなり難しいものだからです。

 

どう難しいか?

 

まず、歯そのものの形が複雑なうえに、歯並びの複雑さもこれに加わります。

さらに、小さいお子さんの場合は親御さんの「仕上げ磨き」がメインになりますが、お子さんによっては嫌がったり暴れたりしてうまくできないこともあります。

お口の中はせまく、暗くて見えにくいことも難しい要因です。

そのため、これらの要因を克服してハミガキを「きちんと」できるようになるには、かなりの努力が必要になってきます。

 

それに比べて、②のおやつコントロールは、「理屈」さえ理解できれば、あとは与え方を正しくするだけで済むので、「きちんとした」ハミガキをマスターするほどの努力は必要ないと思います。

 

≪おやつコントロールをすることで、潜在的なリスクを下げることができる≫

また、おやつコントロールが小さいうちからしっかりできていると、棲みつく「むし歯菌」もエサが不足して「弱った」状態のままにすることができます。

つまり、潜在的にむし歯に「なりにくい」状態にできるということです。

そしてこの状態は、よほどの食生活の乱れがない限り、基本的に一生続きます。

なので、幼少期に親御さんがおやつコントロールに取り組むことで、お子さんの生涯にわたってのむし歯リスク低減に貢献できるというわけです。

 

ハミガキは、小さい頃は仕上げ磨きメインですが、成長するにつれて、「本人磨き」に移行します。

それ以降に、本人がハミガキをサボってしまえば、当然ですがむし歯リスクは上がります。

ところが、ハミガキ不足によるリスクの上昇があったとしても、そもそもお口の中にいるむし歯菌が弱かった場合、そちらのリスクの「低さ」が助け舟となって、むし歯にならない可能性もでてくるのです。

 

 

なので、

「取り組みやすさ」

「低リスク状態の確保」

の2つの観点から、ハミガキのテクニックを磨く努力をするより先に、おやつコントロールの理論をしっかり頭に入れて取り組むことをお勧めします。

 

 

では、「おやつコントロール」「ハミガキ」のそれぞれについて、全年齢に共通した考え方をご紹介します。

 

【おやつコントロールについて】

基本的な考え方として、

 

1日のうちの「砂糖がお口の中に入っている時間」をいかに抑えるか?

 

がポイントになります。

 

≪おやつを与える回数≫

例えば、同じポッキー3本を食べるとして、

 

 ①1時、2時、3時の3回に分けて1本ずつ食べる場合

 ②1時に3本とも全て1回で食べきる場合

 

どちらがむし歯リスクが高いと思いますか?

 

正解は、①の、3回に分けた場合です。

 

お口の中に砂糖が入ってくると、むし歯菌が元気になり、歯を溶かそうとします。

(あくまで溶かそうとするだけであって、すぐにすぐ穴があくわけではないです)

しかし、砂糖の供給がなくなると、エサ不足でだんだんと元気がなくなります。

溶かされかけた歯も唾液の力などによって再生します。

 

②の場合だと、1時に1回だけむし歯菌は元気になりますが、それ以降は晩御飯まで元気になるチャンスはありません。

しかし、①の場合だと、晩御飯までに3回も元気になるタイミングがあります。

 

 

 

むし歯で穴があくのは、このような

「むし歯菌が元気になる」時間の積み重ね

によって起こるのです。

なので、1日のうち、砂糖を摂取する「回数」を少なくする、というのが第一のポイントです。

 

≪おやつを食べる時間の長さも重要≫

しかし、回数は1回でもその1回にかかる時間がなが~~~い場合は、砂糖がお口の中に存在する時間が長くなりますので、このような食べ方でもリスクは上がります。

1回の食事が長い、それはつまりダラダラ食い・ダラダラ飲みをしているということです。

特にお子さんの場合は、テレビを見ながら、スマホを見ながら、ゲームをしながら、あるいは勉強をしながら・・・このような「ながら食い」が、特に飲食時間が長くなる要因になります。

このような「ダラダラ飲食」「ながら食い」をしない

言い換えると、食べているとき・食べていないときの「メリハリ」をきちんとつける

これが第二のポイントになります。

 

 

≪何を与えるか≫

食べるおかしの種類によっても砂糖が存在する時間が変わってきます。

 

例えば、イチゴなどのフルーツの場合、数にもよりますが、食べきるのにせいぜい5分もあれば足りるでしょう。

また、キャラメルのようにネチョネチョした性質のものではないので、食べ終わった後にイチゴが歯の表面にこびりついて残ることは少ないです。

そして、イチゴは甘い味がしますが、ほとんどは水分なので、含まれる「糖分」(果糖)も、実はけっこう少ないです。

 

それに比べてハイチュウはどうでしょう?

ハイチュウは全部食べきるまでちょっと時間がかかります

そして、ネチャネチャしているので、食べ終わった後も、一部歯の表面に残っていることが多いです。

さらにダメ押しで、砂糖もかなり大量に含まれています

むし歯トリプルパンチです。

 

このように、何を与えるかによってもリスクが変わってきますので、なるべくリスクの低いものを与えるというのが、第三のポイントになります。

 

与えるものを何にするかの考え方の基本として、

「砂糖が含まれているかどうか(キシリトールなどのむし歯の原因にならない甘味料であれば大丈夫)」

「含まれている砂糖の量」

「食べきるまでにかかる時間」

「食べた後・飲んだ後に歯の表面に残りやすいかどうか」

で総合的に判断します。

 

ざっくりと、リスク別に食べ物・飲み物を分類しますので、参考になさってください。

 

ゼロリスク(むし歯のリスクが全くない。いくら食べても大丈夫)

・キシリトール製品(ガム・タブレット)

・お水

・お茶

 

ローリスク(むし歯のリスクはかなり低い)

・フルーツ

・チーズ

・牛乳

 

ミドルリスク(むし歯のリスクがまあまあある)

・グミ、ゼリー(砂糖を含むが、歯の表面に残りにくい)

・チップス系(砂糖は含まないが、歯の表面に残る)、

・アイス、ジュース(液体なので歯の表面にこびりつくことはないが、上の前歯の付け根など、意外と唾液で洗い流されにくい場所がある)

 

ハイリスク(むし歯のリスクはかなり高い)

チョコレートアメハイチュウキャラメル(大量の砂糖を含み、食べきるのに時間がかかり、食べた後も歯の表面に残る)

 

 

≪おやつを与えるタイミング≫

一日のうち、いつおやつを与えるか、与えるタイミングにも注意が必要です。

これが第四のポイントです。

基本的に、会話などでお口が動いて活動していると、お口周りの筋肉の動きやベロの動きによって唾液分泌が促され、お口の中に残った成分が胃の方に流されやすくなります。

逆に、寝ている時などお口の活動がほとんどない場合、お口の中の残った成分が停滞しやすくなります。

つまり、同じおやつでも、これから活動する朝に食べるのと、寝る直前に食べるのでは、後者の方が圧倒的にリスクが高くなります。お昼寝や夜の就寝前に与えないようにしましょう。

例外的に、前述のゼロリスクのものは、大丈夫です。

もしゼロリスク以外のものを与えてしまった場合は、寝る前にハミガキをしてあげましょう。

 

以上、おやつコントロールのポイントをまとめます

1日のうちの回数を減らす

ダラダラ食い・ダラダラ飲みをしない

なるべくリスクの低いものを選ぶ

寝る前にリスクのあるものは与えない

 

 

【ハミガキについて】

ハミガキについては、月齢・年齢によって生えている歯が変わる上に、歯の形や大きさ・並びにも個人差があるため、そのポイントはその人その人によってバラバラです。

なので、そのテクニック上の注意点については歯医者で実際に歯科衛生士さんに診てもらい、ポイントを聞いてみるしかないです。

共通の注意事項としては、「1日1回、寝る前にする」ことを頭に入れておきましょう。

ハミガキ回数については親御さんによく質問を受けます。

おやつコントロールがちゃんとできている場合は、1日1回で大丈夫です。

できていない場合は、回数を増やすべきですが・・・まあ、おやつコントロールの方をしっかりしたほうが簡単で早いし、確実性も上がります。

前述の通り、寝ている時が一番リスクが上がるので、ハミガキをしてから寝るまでは、ゼロリスクのもの以外は口にしないようにしましょう。

 

 

今回はここまでです。

次回は、【乳歯の前歯のみ生えている時期】(6か月~1歳3カ月ぐらい)について解説します。

 

その他のリンク

お子さんのむし歯予防③【乳歯の奥歯の生え始め~永久歯が生え始める前】(1歳4か月~6歳)

お子さんのむし歯予防④【6歳臼歯が生える時期】(5歳~9歳)

お子さんのむし歯予防⑤【12歳臼歯が生える時期】(小学5年~中学3年)

むし歯予防対策 初級編 その④【ベロで歯の表面を触る(舐める)習慣をつける】

皆さんこんにちは。

今回は、簡単なむし歯予防対策の4番目の方法として、

【ベロで歯の表面を触る(舐める)習慣をつける】

方法についてご紹介します。

 

今回の方法でキーポイントとなるのは「唾液(だえき)」です。

 

唾液は「つば」のことで、お口の中が乾燥しないように、つねに一定量お口の中に出つづけている液体です。

これは、単なる水ではなく、抗菌成分や消化酵素など、多くの有効成分を含んだ体液です。

唾液には色々な役割があるのですが、むし歯予防の観点から重要な役割は、以下の3つです。

 

・抗菌成分によりむし歯菌の活動をある程度抑える

・カルシウムなどのミネラルを含み、酸によって歯から失われたミネラルを歯に戻す

・食事によって「酸性」に傾いたお口の中の環境を「中性」に戻す

 

これらの恩恵を得るためには、歯の表面に唾液が運ばれてくる(歯と接触する)ことが必要です。

 

唾液は、お口の中にある唾液腺という組織から分泌されます。

 

唾液腺のうち小さいものを小唾液腺といって、これは、お口の中の粘膜全体に広く無数に存在しています。

小さいので、出てくる唾液の量は少なく、粘膜の表面からじわ~とにじみ出てくるような感じになります。

 

大きいものを大唾液腺といい、これは下あごのベロの下と、頬っぺたの中にあります。

大きいだけあって、唾液をたくさん出すのですが、大唾液腺の唾液が出てくる場所は、ベロの付け根1か所と、頬っぺたの内側左右2か所を合わせて、計3か所になります。

この大唾液腺から出てくる唾液は、お口の中で一定の「流れ」を作るように、お口の中をめぐっています。

 

そして、この「流れ」は、場所によって強い箇所もあれば、弱い箇所もあります

川で例えると、急流のように激しい流れがある場所と、支流や用水路のように小さく穏やかな流れがある場所があるような感じです。

これらの「流れ」の中で、「激しい」唾液の流れにさらされる場所にある歯の表面は、常に唾液の恩恵を受けて、むし歯になりにくい環境にあります。

 

例えば、下の歯の内側です。

ここは、ベロの付け根に近く、大唾液腺から出た直後の唾液が大量に当たる場所ですので、多くの人がむし歯になりにくい箇所です。

 

これに対し、「少なくて穏やかな」唾液の流れしかない場所は、唾液の恩恵を受けることができず、むし歯になりやすい箇所になります。

自然な状態では流れが弱いのであれば、こちらから意識して唾液を運んであげればいい、ということになります。

今回の方法は、このように通常では流れが弱い場所に、意識して唾液を運び込む方法です。

 

さて、では具体的にどうすればいいかというと、

特に何も考えずに、「すべての歯の表面(おもて、うら、咬み合わせ面)を順番になめ回す」ということをしてください。それだけです。

先ほどの説明のように、唾液が「行き渡りやすい場所」、「行き渡りにくい場所」の違いはあるのですが、これには個人差もあり、実際にどこが行き渡りにくい場所かというのは判断が難しいです。

なので、そこまで深く考えず、適当にベロを色々な歯の色々な面に持っていきましょう。同じ箇所ばかり触るではなく、なるべく色々な場所を触るのがポイントです。

 

これを日常的に頻回に行うことで、唾液を歯の表面隅々まで行き渡らせることができ、むし歯予防に貢献できる可能性が高まります。

 

ちなみに、これをすることによって、

・歯の表面の汚れがあるとザラザラした触感になるので、磨き残した場所がベロの感覚として分かりやすい(磨き残している場所をみつけやすい)

・ベロを動かす=ベロの筋トレになります。また、同時に唇や頬っぺたも動かすことになるので、活舌(発音)や咀嚼、飲み込み(嚥下)機能の強化、あるいは低下の予防ができる

といった副次的な恩恵も得ることができます。

 

 

 

以上、4回に亘って、なるべく簡単なむし歯予防方法をご紹介しました。

まずは、日常生活でこれらのことを取り入れてみて、さらにヤル気が出てきたら、他の手段へとステップアップしてみてください。

皆様のお口の健康維持に少しでも貢献できれば幸いです。

 

その他の内容リンク

【キシリトールを活用する】

【普段飲む飲み物を緑茶にする】

【歯みがき粉を必ず使い、使い方をひと工夫する】

むし歯予防対策 初級編 その③【歯みがき粉を必ず使い、使い方をひと工夫する】

皆さんこんにちは。

今回は、簡単なむし歯予防対策の3番目として、

【歯みがき粉を必ず使い、使い方をひと工夫する】

方法についてご紹介します。

 

前回も少し触れましたが、現在市販されているハミガキ粉のほとんどに、フッ素という成分が含まれています。

フッ素はむし歯予防にかなり有効なので、普段のハミガキの際には必ずフッ素入りのハミガキ粉を使いましょう。

まれにフッ素が含まれていないハミガキ粉がありますので、心配な場合はパッケージか成分表で確認してみてください。

パッケージの場合は分かりやすく「フッ素配合」といった感じで書かれていることが多いです。

パッケージに書かれていない場合は成分表をみてみましょう。

「フッ化ナトリウム」

もしくは

「モノルフオロリン酸ナトリウム」

と書かれていればフッ素が入っています。

 

また、できればフッ素濃度が高い方がむし歯予防効果は高まります。

現在、日本で認可されているハミガキ粉のフッ素濃度は最高で1,500ppmですので(ppmは濃度の単位です。どのハミガキ粉も、フッ素濃度はppmで表記されています)、6歳以上の方は、できるだけこれに近い数値のものを選びましょう。

 

しかし、市販品の場合は濃度が書かれていることがあまりないです。

 

歯科医院の窓口コーナーで売られているものはフッ素濃度が分かるものが多いので、より確実にしたい場合は歯科医院で購入しましょう。

(ちなみに、6歳未満のお子さんの場合、誤って大量に飲み込むなどでフッ素を過剰摂取してしまうと、「歯のフッ素症」という副作用が出る危険性があるため、1,000ppmが推奨されています)

 

 

次に、せっかく使うのですから、ハミガキ粉のフッ素の効果を最大限引き出せるよう、ハミガキの方法にもひと工夫加えましょう。

 

ポイントとしては、2つあります。

 

ひとつは、ハミガキ後のうがいをなるべくやさしめにする、ということです。

ハミガキ粉を使ってハミガキをすると、ハミガキ粉が泡立ち、お口の中全体に広がります。

これによりフッ素の成分もお口の中に広がって効果を発揮します。

その後でうがいをすると、ハミガキ粉とともに大部分のフッ素は外に洗い流されていきます。

なので、うがいによって失われるフッ素を極力抑えるポイントとしては、

・なるべく少ない量のお水でうがいをする

・うがいの動作をブクブクっと激しくせず、優しくお口の中全体にお水を行き渡らせて洗い流すようにする

・うがいの回数をなるべく減らす(できれば1回だけ)

となります。

 

ハミガキ粉が残りすぎると気持ち悪いと思いますので、気持ち悪くない程度で、なるべくフッ素が残るようにうがいをしてみてください。

 

もうひとつは、2回ハミガキをする、という方法です。

(この方法は、ちょっと面倒くさい方法になるため本シリーズの「なるべく簡単な方法」というテーマからは外れてしまうかもしれません。ので、これは余裕があるときにやってみてください)

 

フッ素が歯に対して効果を発揮する時は、歯の表面に直接フッ素が接触する必要があります。

しかし、ハミガキをする前は、歯の表面に歯垢(しこう)という汚れが付いています。

そのため、通常多くの人がやる方法、「ハミガキ粉を付けて1回だけ磨く」方法の場合、歯垢の除去とフッ素を歯に効かせることを同時に行っていることになります。

ところが、ハミガキをしていると、唾液が出てきてハミガキ粉の濃度がどんどん薄まっていきます。

ハミガキ粉が薄まると、中に入っているフッ素の成分の濃度も薄まってしまい、せっかくのフッ素効果が半減してしまいます。

また、ハミガキ粉はスッキリとした味が多いので、はじめからハミガキ粉を付けて磨くと、しっかり磨けていなくても、(スッキリしてしまうので)磨けている「つもり」になってしまう可能性もあります。

以上のことから、よりしっかりとしたハミガキをして、よりしっかりフッ素を効かせるために、まずは歯磨き粉なしで汚れを落とし、次に歯磨き粉を付けてフッ素を歯に作用させる、という2回に分けて行うことをお勧めします。

 

今回のポイントをまとまると、次のようになります。

・フッ素入り歯みがき粉を必ず使う。

・なるべくフッ素濃度の高いものを使う。

・実際のハミガキの手順

①まずはハミガキ粉なしで磨いて、表面の汚れを落とす。

②一度しっかりうがいをする。

③歯ブラシの毛先をタオルなどで拭き、水分を取る。(水分が残っていると歯磨き粉が薄まる)

④歯ブラシに歯磨き粉を付けて、まずはすべての歯の表面に塗り付けるように行き渡らせる(どちらかというと、フッ素の「塗り薬」を歯に塗るイメージで)

⑤もう一度順番にハミガキをする(2回目のハミガキは、汚れを取るのではなく、フッ素をすみずみまで行き渡らせる目的で行う)

⑥フッ素が残るように、少なめの水で軽いうがいを1回だけする

 

 

次回は、【ベロで歯の表面を触る(舐める)習慣をつける】方法についてご説明します。

 

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【キシリトールを活用する】

【普段飲む飲み物を緑茶にする】

 

むし歯予防対策 初級編 その②【普段飲む飲み物を緑茶にする】

皆さんこんにちは。

今回は、簡単なむし歯予防対策第2弾として、

【普段飲む飲み物を緑茶にする】

方法についてご紹介します。

 

今の世の中、色々な飲み物が市販されておりますが、歯にとって良くない飲み物もあれば、良い飲み物もあります。

良くない飲み物、つまりむし歯や知覚過敏のリスクを上げてしまう飲み物の特徴は、以下の通りです。

 

・砂糖を多く含むもの

・飲み物自体が酸性であるもの

 

これに対し、緑茶は、

 

・砂糖を含まない

・酸性ではなく、中性である

 

ということから、むし歯の原因にならない飲み物です。

さらに、

 

・フッ素を含む

・カテキンを含む

 

ということから、歯にとってむしろプラスに働く飲み物でもあります。

では、それぞれどのように「歯に良い」のでしょうか?

 

まずは、フッ素を含むことについてです。

フッ素というのは、歯に良い成分として有名ですが、その主な作用として、

①フッ素が歯の中に吸収されることによって、歯そのものを強くする

②唾液の中のカルシウムなどのミネラルを運んできて、失われたミネラルを歯に取り戻す手助けをしてくれる

③むし歯菌の活動を少し弱めてくれる

などがあります。

フッ素が歯に作用するための条件としては、フッ素を含むものが歯に直接当たる、ということが必要です。

これは要するにお口の中に含めば良い、ということですが、さらにフッ素の効果をより高めるには、なるべく長い時間、お口の中にフッ素をとどめておく方が良いそうです。

 

身の周りでフッ素を含むものの例として、ハミガキ粉があります。

現在市販されているハミガキ粉のほとんどの製品に、フッ素が含有されています。

しかし、ハミガキ粉はハミガキの時にしか使わないので、長い時間お口の中にとどめておくということは現実問題としてできません。

 

そこでお勧めなのが、緑茶です。緑茶の中にも天然成分としてフッ素が含まれています。

ハミガキ粉にくらべてフッ素の濃度はかなり低いのですが、お茶の場合はペットボトルや水筒に入れて、好きな時にお手軽に飲むことができます。

飲み込んだ後でお口の中がカラッポになっても、フッ素などの成分としては少し残るので、頻回に飲む場合は「お口の中にフッ素を長時間とどまらせる」という点において優れています。

また、そんなに頻繁に飲むことができなくても、普段の水分補給の手段として他の飲み物ではなく緑茶を選ぶだけで、多少なりともフッ素の恩恵を得られますので、ぜひ普段飲む飲み物は緑茶にしてみてください。

少なくともジュースを飲むよりは圧倒的にこちらの方がいいです!

 

次に、カテキンについてですが、こちらは抗菌作用があり、お口に含んだ時にむし歯菌の活動を弱めてくれる効果が期待できます。

これも、消毒薬やうがい薬ほどの効果はないと思われますが、フッ素のご説明で申し上げた通り、「手軽にいつでも口に含むことができる」という点で、優れています。

 

以上のことから、普段常備する飲み物として緑茶を用意しておくことをお勧めします。

 

ただし、注意点が2点ほどあります。

ひとつは、普通の緑茶はカフェインを含むということです。

カフェインには覚醒作用があり、例えば寝る前に飲んだ時など、寝つきが悪くなる可能性があります。

また、小さいお子さんはカフェインをあまり摂らないほうがいいと言われています。

そのため、状況次第では、ノンカフェインの緑茶を選んだ方がいいでしょう。

 

もうひとつは、歯の表面に茶シブ汚れが付きやすくなることです。

茶シブ汚れが付いたとしても健康上は問題はないのですが、見た目が悪くなるので、気になる場合は歯科医院で定期的に取ってもらうか、ホワイトニング効果のあるハミガキ粉を使ってみましょう。

 

次回は、【歯みがき粉を必ず使い、使い方をひと工夫する】方法についてご説明します。

 

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【キシリトールを活用する】

【ベロで歯の表面を触る(舐める)習慣をつける】

 

むし歯予防対策 初級編 その①【キシリトールを活用する】

皆さんこんにちは。

 

今回は簡単なむし歯予防方法として1番目の、

【キシリトールを活用する】

方法についてご紹介します。

 

キシリトールというのは代替甘味料のひとつで、甘い味はするけれど、むし歯の原因にならない甘味料です。

代替甘味料には他にも種類があるのですが、キシリトールには、むし歯菌の活動を抑えてくれる(むし歯菌を弱らせてくれる)作用もある、という研究結果があります。

 

つまり、普通の砂糖は、むし歯予防のためにはなるべく食べない方がいいのですが、キシリトールについては、逆に積極的に食べた方がいい、ということになります。

頻回に摂取することで、むし歯菌を弱らせる時間を増やして、むし歯にさせる力を弱めることができるからです。

ですので、日常生活の中で、「キシリトール製品を食べる」習慣を加えれば、それだけでむし歯予防対策になります。

 

さて、キシリトール製品については、大きく分けて2種類の製品が市販されています。

ひとつは、「キシリトールガム」

そしてもうひとつは、「キシリトールタブレット」です。

代表的な商品でいいますと、どちらもロッテのものがあり、両方ともスーパーで売っていることが多いので、比較的手に入りやすい商品だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

ガムとタブレットは、どちらでもいいので、味などのお好みで選んでいただければ大丈夫です。

ただし、タブレットの場合は、「かみ砕いてすぐに飲み込む」という食べ方ではなく、アメのように「溶けてなくなるまでなめる食べ方」のほうがより効果的だと思います。(なるべくキシリトール成分がお口の中に長い時間とどまった方がいいためです)

仕事中に食べることが許されていれば仕事の途中で、あるいはデザートやおやつとして、キシリトール製品を食べてみてはいかがでしょうか。

(キシリトール以外にも、むし歯菌を弱らせる効果がある甘味料が発見されてはいますが、手に入りやすさを考慮して、今回はキシリトールのみのご紹介としています)

 

キシリトールのむし歯菌抑制効果について、より詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

【むし歯菌を弱らせる方法】

 

次回は、【普段飲む飲み物を緑茶にする】方法について、ご説明します。

 

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