みなさんこんにちは。
本シリーズでは、お子さんのむし歯予防について、歯が生える時期ごとに、その時々のポイントを解説していきたいと思います。
今回は、その前の基礎知識といいますか、全年齢に共通した注意事項や知っておいてほしいことをまずお話ししていきます。
【むし歯予防の2つのポイント】
むし歯予防には、
① ハミガキがきちんとできているか?
②おやつのコントロールができているか?
この2つが重要になってきます。
≪どちらを優先すべきか?≫
これら2つは、両方とも同じぐらい重要なのですが、対策の取りやすさから考えると、断然、②のおやつコントロールの方がやりやすいと思います。
というのも、ハミガキというのはとても身近な生活習慣でありながら、実は「きちんと」しようと思うとかなり難しいものだからです。
どう難しいか?
まず、歯そのものの形が複雑なうえに、歯並びの複雑さもこれに加わります。
さらに、小さいお子さんの場合は親御さんの「仕上げ磨き」がメインになりますが、お子さんによっては嫌がったり暴れたりしてうまくできないこともあります。
お口の中はせまく、暗くて見えにくいことも難しい要因です。
そのため、これらの要因を克服してハミガキを「きちんと」できるようになるには、かなりの努力が必要になってきます。
それに比べて、②のおやつコントロールは、「理屈」さえ理解できれば、あとは与え方を正しくするだけで済むので、「きちんとした」ハミガキをマスターするほどの努力は必要ないと思います。
≪おやつコントロールをすることで、潜在的なリスクを下げることができる≫
また、おやつコントロールが小さいうちからしっかりできていると、棲みつく「むし歯菌」もエサが不足して「弱った」状態のままにすることができます。
つまり、潜在的にむし歯に「なりにくい」状態にできるということです。
そしてこの状態は、よほどの食生活の乱れがない限り、基本的に一生続きます。
なので、幼少期に親御さんがおやつコントロールに取り組むことで、お子さんの生涯にわたってのむし歯リスク低減に貢献できるというわけです。
ハミガキは、小さい頃は仕上げ磨きメインですが、成長するにつれて、「本人磨き」に移行します。
それ以降に、本人がハミガキをサボってしまえば、当然ですがむし歯リスクは上がります。
ところが、ハミガキ不足によるリスクの上昇があったとしても、そもそもお口の中にいるむし歯菌が弱かった場合、そちらのリスクの「低さ」が助け舟となって、むし歯にならない可能性もでてくるのです。
なので、
「取り組みやすさ」
「低リスク状態の確保」
の2つの観点から、ハミガキのテクニックを磨く努力をするより先に、おやつコントロールの理論をしっかり頭に入れて取り組むことをお勧めします。
では、「おやつコントロール」「ハミガキ」のそれぞれについて、全年齢に共通した考え方をご紹介します。
【おやつコントロールについて】
基本的な考え方として、
1日のうちの「砂糖がお口の中に入っている時間」をいかに抑えるか?
がポイントになります。
≪おやつを与える回数≫
例えば、同じポッキー3本を食べるとして、
①1時、2時、3時の3回に分けて1本ずつ食べる場合
②1時に3本とも全て1回で食べきる場合
どちらがむし歯リスクが高いと思いますか?
正解は、①の、3回に分けた場合です。
お口の中に砂糖が入ってくると、むし歯菌が元気になり、歯を溶かそうとします。
(あくまで溶かそうとするだけであって、すぐにすぐ穴があくわけではないです)
しかし、砂糖の供給がなくなると、エサ不足でだんだんと元気がなくなります。
溶かされかけた歯も唾液の力などによって再生します。
②の場合だと、1時に1回だけむし歯菌は元気になりますが、それ以降は晩御飯まで元気になるチャンスはありません。
しかし、①の場合だと、晩御飯までに3回も元気になるタイミングがあります。
むし歯で穴があくのは、このような
「むし歯菌が元気になる」時間の積み重ね
によって起こるのです。
なので、1日のうち、砂糖を摂取する「回数」を少なくする、というのが第一のポイントです。
≪おやつを食べる時間の長さも重要≫
しかし、回数は1回でもその1回にかかる時間がなが~~~い場合は、砂糖がお口の中に存在する時間が長くなりますので、このような食べ方でもリスクは上がります。
1回の食事が長い、それはつまりダラダラ食い・ダラダラ飲みをしているということです。
特にお子さんの場合は、テレビを見ながら、スマホを見ながら、ゲームをしながら、あるいは勉強をしながら・・・このような「ながら食い」が、特に飲食時間が長くなる要因になります。
このような「ダラダラ飲食」「ながら食い」をしない、
言い換えると、食べているとき・食べていないときの「メリハリ」をきちんとつける!
これが第二のポイントになります。
≪何を与えるか≫
食べるおかしの種類によっても砂糖が存在する時間が変わってきます。
例えば、イチゴなどのフルーツの場合、数にもよりますが、食べきるのにせいぜい5分もあれば足りるでしょう。
また、キャラメルのようにネチョネチョした性質のものではないので、食べ終わった後にイチゴが歯の表面にこびりついて残ることは少ないです。
そして、イチゴは甘い味がしますが、ほとんどは水分なので、含まれる「糖分」(果糖)も、実はけっこう少ないです。
それに比べてハイチュウはどうでしょう?
ハイチュウは全部食べきるまでちょっと時間がかかります。
そして、ネチャネチャしているので、食べ終わった後も、一部歯の表面に残っていることが多いです。
さらにダメ押しで、砂糖もかなり大量に含まれています。
むし歯トリプルパンチです。
このように、何を与えるかによってもリスクが変わってきますので、なるべくリスクの低いものを与えるというのが、第三のポイントになります。
与えるものを何にするかの考え方の基本として、
「砂糖が含まれているかどうか(キシリトールなどのむし歯の原因にならない甘味料であれば大丈夫)」
「含まれている砂糖の量」
「食べきるまでにかかる時間」
「食べた後・飲んだ後に歯の表面に残りやすいかどうか」
で総合的に判断します。
ざっくりと、リスク別に食べ物・飲み物を分類しますので、参考になさってください。
ゼロリスク(むし歯のリスクが全くない。いくら食べても大丈夫)
・キシリトール製品(ガム・タブレット)
・お水
・お茶
ローリスク(むし歯のリスクはかなり低い)
・フルーツ
・チーズ
・牛乳
ミドルリスク(むし歯のリスクがまあまあある)
・グミ、ゼリー(砂糖を含むが、歯の表面に残りにくい)
・チップス系(砂糖は含まないが、歯の表面に残る)、
・アイス、ジュース(液体なので歯の表面にこびりつくことはないが、上の前歯の付け根など、意外と唾液で洗い流されにくい場所がある)
ハイリスク(むし歯のリスクはかなり高い)
・チョコレート、アメ、ハイチュウ、キャラメル(大量の砂糖を含み、食べきるのに時間がかかり、食べた後も歯の表面に残る)
≪おやつを与えるタイミング≫
一日のうち、いつおやつを与えるか、与えるタイミングにも注意が必要です。
これが第四のポイントです。
基本的に、会話などでお口が動いて活動していると、お口周りの筋肉の動きやベロの動きによって唾液分泌が促され、お口の中に残った成分が胃の方に流されやすくなります。
逆に、寝ている時などお口の活動がほとんどない場合、お口の中の残った成分が停滞しやすくなります。
つまり、同じおやつでも、これから活動する朝に食べるのと、寝る直前に食べるのでは、後者の方が圧倒的にリスクが高くなります。お昼寝や夜の就寝前に与えないようにしましょう。
例外的に、前述のゼロリスクのものは、大丈夫です。
もしゼロリスク以外のものを与えてしまった場合は、寝る前にハミガキをしてあげましょう。
以上、おやつコントロールのポイントをまとめます
1日のうちの回数を減らす
ダラダラ食い・ダラダラ飲みをしない
なるべくリスクの低いものを選ぶ
寝る前にリスクのあるものは与えない
【ハミガキについて】
ハミガキについては、月齢・年齢によって生えている歯が変わる上に、歯の形や大きさ・並びにも個人差があるため、そのポイントはその人その人によってバラバラです。
なので、そのテクニック上の注意点については歯医者で実際に歯科衛生士さんに診てもらい、ポイントを聞いてみるしかないです。
共通の注意事項としては、「1日1回、寝る前にする」ことを頭に入れておきましょう。
ハミガキ回数については親御さんによく質問を受けます。
おやつコントロールがちゃんとできている場合は、1日1回で大丈夫です。
できていない場合は、回数を増やすべきですが・・・まあ、おやつコントロールの方をしっかりしたほうが簡単で早いし、確実性も上がります。
前述の通り、寝ている時が一番リスクが上がるので、ハミガキをしてから寝るまでは、ゼロリスクのもの以外は口にしないようにしましょう。
今回はここまでです。
次回は、【乳歯の前歯のみ生えている時期】(6か月~1歳3カ月ぐらい)について解説します。
その他のリンク
お子さんのむし歯予防③【乳歯の奥歯の生え始め~永久歯が生え始める前】(1歳4か月~6歳)
お子さんのむし歯予防④【6歳臼歯が生える時期】(5歳~9歳)
お子さんのむし歯予防⑤【12歳臼歯が生える時期】(小学5年~中学3年)